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超重量級の犯罪小説。宮部みゆき「模倣犯」感想

何となく宮部みゆきの有名な未読作品を読みたくなって手にとった。いやはや、おそろしく重厚な作品だった。物理的にもそうだし(文庫版は全5巻。電子書籍版なし)、内容の面でもクソ重い。

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テーマの1つとして「ある日突然犯罪によって破壊される日常」といったものがあり、演出として破壊される直前までの登場人物の生い立ちや日々の暮らしなどを丁寧に描写している。物理的な重厚さの理由には、この仔細な描写によるところも大いにある。

連続殺人事件を扱った小説である、という点ではミステリー小説のようであるが、犯人自体は早々に明らかにされる。3部構成の第2部以降は、犯罪者と周辺の登場人物たち、そして警察の動きを追いながら、非常に特殊な犯人と、被害者と、警察とあとジャーナリスト(?)との対決を描いていく。後半では、犯人に振り回されながら徐々に真実の欠片を掴んでいく描写が分厚い。

重厚なわりに、最後のカタルシスがうすい小説だ。それが悪いとも一概には言えないと思うものの、長い小説を読み終えた最後に、疲れ(と出費)に見合う何かこうパッとしたものが欲しかったなあ娯楽小説ならば、というのが読後の正直な感想で、まあある意味パッとしているといえばいるのかもしれないが、でもなあ、そういえば前に自分内で宮部みゆきブームが終了したときもこんな感覚だったなあ、と思い出した。

何というか、ちょっと味気ない感じがする。巧すぎて、旨みがちょっと足りない、みたいな。
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