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映画「この世界の片隅に」を家族で観た

打ちのめされて言葉もない。が、「観た」だけで終えるのも何なので、何か書いておく。

個人的な好き嫌いで言えば、好んで観たいジャンルの作品ではない。ただ、くっそ苦い草も最適な料理人が最適な調理法で煮込んだり干したりなんかいろいろしたらそこから「滋味」とでも言っとくしかないような形容しがたい不思議な味わいが出てくることがあるよねみたいな、そういう作品だと思う。原作は読んだことがあったなと思ったけど、それは「夕凪の街 桜の国」で、こちらは未読だった。

超気が進まない様子(気持ちはよくわかる)の息子を連れて、家族で観に行った。観終わったときにはげっそりした顔で「やっぱり観たくなかった」と言っていたが、原爆のことや広島や呉のことなどへの関心は芽生えたようでいろいろと聞かれたし、「オバマが広島に来た意味がわかった」とも言っていた。なるほど、そこに繋がるのか。

何かを「知る/知っている」ことが、必ずしも幸福や利益につながるとは限らない。本作の主人公である「すず」やまわりの人たちは、後世の私たちが知っていることの多くを知らない。しかしまあ、知らないでいるよりも知っていた方が、少なくとも運命を適切に受け入れられるようになるはずで、それが価値の1つだ、というのが多くの人の行動を支える原理ではないかと思う。

映画で語られた場面のあと、すずは多くのことを知ったり経験したりしただろう。私は、当時に暮らす人たちの生活感や視座のひとつを経験した(気になった)。息子はこれから見聞きするであろう多くのことと、本作を関連付けて考えるのだと思う。

それらは必ずしも楽しさや利益に直接結び付くものではないかもしれないが、何というか、たぶん「手札が増える」みたいな感じになるんじゃないかなあ。細かい札かもしれないけど。


上白石萌音「chouchou」に圧倒される

「君の名は。」で三葉役を演じた方である。デビュー作から歌唱力の評価が高く、RADWIMPSの曲をカバーするという話は何となく見ていたのだが、「ミュージックステーション」で歌を聴いて衝撃を受けた。すごい。

で、AmazonでCDを探したらAmazonプライムミュージックに入っていたので、さっそく聴いた。

Apple Musicでも聴ける。あらゆる定額配信サービスに入っているのかもしれない。

何といえばいいんでしょうか。「君の名は。」の印象を引きずっている部分もあるかもしれないけど、けれん味がなく、とても素直で、技術も確か。安心して引き込まれていける、という感じがある。


映画「君の名は。」感想

「君の名は。」を観た。この夏は話題作が目白押しな中で観たのはポケモン映画だけです、というのも勿体ないというか人として問題があるんじゃないかとも思えてきて、しかし最寄りの映画館でやっている「シン・ゴジラ」は時間が合わず、では「君の名は。」にしましょう、ということで行った。

と書くと消極的選択の果てみたいだが、Webにあふれる新海誠監督評はときどき斜め読みしていて、ものすごくハマるか全然合わないかのどちらかのように思えてちょっと怖かった、というところもある。新海監督の映画はこれまで観たことはなく、「君の名は。」が初めてとなった。

20160918-10

とてもよかった。合う合わないとかの個人の好みのレベルでなく、多くの人の心を打つ普遍的な強さを持った映画だと思う。

「世界は美しい」そして「人生は生きるに値するものだ」と、誰の言葉だか忘れたけど、そんな感想だけが残ってあんまり細々と語る気にもなれず、「すごかった」ぐらいしか出ない。一緒に観に行った妻は「先が読めな過ぎて胃が痛くなった。楽しかった」と言っていた。

何でしょうね。こんなに「いい」以外の感覚がないエンターテインメント作品に出会ったのはものすごく久しぶりな気がする。とりあえずパンフレットは買ったし、RADWIMPSのアルバムも買ったし、そのうち小説版も買うでしょう。もっといいスクリーンと音響の場所で観たいという気持ちもある。

雑に書いてしまうけども、本作の映像の「美」しさは改めて語るまでもないというか「新海誠監督作品」というのは「そこはとりあえず絶対保証します」ということなんだと思っている。そのうえで主人公たちの「善」性が気持ちいい。これといって特別な描かれ方をしているわけではない、等身大の若者たちでいながら、まっすぐにそれぞれの信じる「善」を為そうとしていることが、気持ちよく作品を見られた理由の1つなのかなと感じた。

「真善美」のもうひとつ「真」においては、設定された事実の複雑さ、難解さと、それに翻弄されながも、最初から最後まで「真」を解き明かし、最良の結果を目指そうとする主人公たちの姿勢に圧倒される。「強い」という印象は、そうしたところから来ているのかなと思った。

ところで、RADWIMPSというバンドをこれまで知らなくて、しかし「どこかで聴いた感じ」がものすごくあることに、ちょっと戸惑っている。