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DeNAの第三者委員会調査報告書を読んでの雑感

いわゆるWelq問題、DeNAキュレーションメディア問題に対する第三者調査報告書の要約版を読んだ(要約していない版も拾い読みした)ので、思ったことをいくつか書き残しておきたい。ちなみに要約版で34ページ、要約していない版は306ページある。

第三者委員会調査報告書(要約版)公表のお知らせ(証券コード:2432 | IR 書類ナビゲータ)
第三者委員会調査報告書の全文開示公表のお知らせ(証券コード:2432 | IR 書類ナビゲータ)

「短期間で収益を上げる事業」としてのメディア事業とは

DeNAが「キュレーション事業」を始めたのは、比較的短期間で収益を上げる事業を求めてだという(要約版P.4)。のっけからガツンとくるレポートだ。Webメディアはなかなか儲からないというのが自分なんかの感覚だが、コンテンツをタダ同然で調達しSEOを徹底すれば、短期間で収益を上げらえる事業になるのだなあというのに、素朴に驚く。

他人が作ったコンテンツを持ってきて適当に混ぜ合わせて自分のところに置きデカイ声で宣伝するという、誰の役に立つわけでもないコンテンツ連動広告の横取り行為を事業だと考えられる発想力がないと、そういうビジネスをやろうと考え付かないのではないか? などと底意地の悪い私としては思うのだが、特段メディア事業の経験も思い入れもなく、また、はてブやらTumblrやらNAVERまとめやらといったサービスの存在を考えれば、その発展形としてソレというのも、まあ自然に考えられるものだろうか。

「キュレーション」という言葉の意味はどこで決定的に変わったか?

私の記憶が確かなら、ネット上の情報のレコメンデーションを「キュレーション」と呼びだしたのは佐々木俊尚さんで、当初の「キュレーション」はオリジナルのコンテンツにトラフィックを流すことで、それなりに全体の共存関係のようなものが担保されていたと思う。

それがいつのまにか、コンテンツを自分のサイトに持ってきて広告で稼いだるでーという行為が「キュレーション」になっていたのだろうか? これまた私の記憶が確かなら、NAVERまとめあたりからだろうか(元サイトへのリンクはあっても小さかったり、なかったりした)。

報告書のP.35では、キュレーションの定義を“「キュレーション」とは、一般的に、インターネット上のコンテンツを特定のテーマや切り口で読みやすくまとめ、編集・共有・公開することをいう”としている。この定義では、オリジナルサイトとの関係について明確にされておらず、第三者委員会のその点の認識がよくわからない。

それにしても、MERYの画像の扱いについて(P.153)、DeNAは根本的な見直しは指示せず何とか免責を主張できるよう剽窃元サーバーの直リンクにしろと言い、ペロリ側は相手サーバーへの負担を考え自社サーバーに持ってくることにした、というのはどっちも悪い冗談とでも思っておかないと恐ろしい。DeNAは何とか法的責任を回避しようとし、ペロリはそもそも不法行為という認識がなかったということか。

本事件を受け、プロバイダ責任制限法の見直しは行われるだろうか。「プラットフォーム」を標榜しつつ実質的に自社メディアとして運営することで自社の責任範囲が縮小されるというのは、さすがにイカン抜け穴だろう。

安い仕事は受けるヤツが悪い

クラウドライターへの報酬の安さについて、こういう言及があった(P.273)

しかし、クラウドソーシング会社において募集されている記事執筆業務の金額的条件には幅があること、DeNAは、クラウドソーシング会社を通じてクラウド執筆ライターを明示していること、クラウド執筆ライター等はクラウドソーシング会社が募集する業務の中から、自らの意思で業務を選んで受注していたことからすれば、(中略)不当に安かったとは考えられない。

趣旨としては「単純に『不当に安い』と糾弾はできないが、不適切な記事を産む背景になったことは否定できない」といった形でたぶんに批判的ではあるが、一方で「安くても受けるヤツがいるから成立してるんだろ」というニュアンスにも取れる。「書く」以外に何もないライター業は辛い。

本報告書で明らかになったDeNAキュレーション事業の展開やノウハウについて、諸々の問題点以外はすばらしく参考になる(問題点も反面教師として参考になる)という意見も見た。が、コンテンツの盗用など不法行為をせず、編集体制を整えてコンテンツの質を保証し、スタッフにもまともな報酬を支払って、とすべての穴をふさいだうえでのメディア事業が、どの程度うまみのあるものになれるのか疑問ではある。いやまあ疑問ではあるとか他人事みたいなこと言っていられる立場でもない気もするが。