映画「この世界の片隅に」を家族で観た

打ちのめされて言葉もない。が、「観た」だけで終えるのも何なので、何か書いておく。

個人的な好き嫌いで言えば、好んで観たいジャンルの作品ではない。ただまあ、くっそ苦い草も最適な料理人が最適な調理法で煮込んだり干したりなんかいろいろしたらそこから「滋味」とでも言っとくしかないような形容しがたい不思議な味わいが出てくることがあるよねみたいな、そういう作品だと思う。原作は読んだことがあったなと思ったけど、それは「夕凪の街 桜の国」で、こちらは未読だった。

超気が進まない様子(気持ちはよくわかる)の息子を連れて、家族で観に行った。観終わったときにはげっそりした顔で「やっぱり観たくなかった」と言っていたが、原爆のことや広島や呉のことなどへの関心は芽生えたようでいろいろと聞かれたし、「オバマが広島に来た意味がわかった」とも言っていた。なるほど、そこに繋がるのか。

何かを「知る/知っている」ことが、必ずしも幸福や利益につながるとは限らない。本作の主人公である「すず」やまわりの人たちは、後世の私たちが知っていることの多くを知らない。しかしまあ、知らないでいるよりも知っていた方が、少なくとも運命を受け入れられるようになるはずで、それが価値の1つだ、というのが多くの人の行動を支える原理ではないかと思う。

映画で語られた場面のあと、すずは多くのことを知ったり経験したりしただろう。私は、当時に暮らす人たちの生活感や視座のひとつを経験した(気になった)。息子はこれから見聞きするであろう多くのことと、本作を関連付けて考えるのだと思う。

それらは必ずしも楽しさや利益に直接結び付くものではないかもしれないが、何というか、たぶん「手札が増える」みたいな感じになるんじゃないかなあ。細かい札かもしれないけど。