「ネイティブ広告」について少し蒸し返してみる

先日はてな主催のネイティブ広告セミナーに参加する機会を得て、ちょっと気になったので、「ネイティブ広告」周辺の事情について振り返ってみる。

「ネイティブ広告」という言葉に対する、ネットにそこそこ関心がある人の印象は「なんかうさんくさいヤツ」ぐらいに留まるのではないだろうか。ネイティブ広告をめぐる議論は2014~2015年ぐらいにあって、おおむね「過去のもの」(今更議論する意味もないもの)という感もある。

当時「ステマ」というキーワードもまた再燃し、「ネイティブ広告=体のいいステマ」みたいな発言も多数見られた記憶がある。Googleトレンドで振り返ってみる。

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2012年1月から話題であり続ける「ステマ」

以下は「ネイティブ広告」と「ステマ」と、出してきた理由は後述するが「インバウンドマーケティング」の3キーワードについて、2011年1月~2016年5月の人気度の変動を出したGoogleトレンドのグラフ。

2012年1月に「ステマ」が爆発していてほかのグラフはほぼ見えなくなってしまっているが、「ステマ」の山を詳しく見ていくと、2012年1月のあと、2012年12月にもちょっとした山があり、2013年後半から2014年前半にかけても燻って、2015年3月にも一悶着あったという感じになっている。

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それぞれ何があったのかは記憶にないが、はてブから探してみたところ、2012年1月の山は「2chステマ騒動」によるものだったと見られる。

「魔法少女まどか☆マギカ」などで知られるアニメ制作会社「シャフト」のサイトに貼られた、ある商品へのAmazonアフィリエイトリンクが、アニメ関連情報を扱う大手ブログニュースサイトのものと同じだ、という内容だった。
これが騒動の発端となった。
2ch「ステマ」戦争 人気板が住民大移動で一気に縮小、その背景の事情と心情 (1/4) – ITmedia ニュース

2012年12月の山は芸能人ブログのステマ騒動か。

H-Yamaguchi.net: ステマというより芸能人詐欺広告塔事件だろうこれは

いわゆる2chまとめブログや芸能人ブログはステマの温床であり、それって日本のWebメディアのほとんどがステマじゃねーの信用ならん、という空気がこのころはあったような気がする。

「ステマ」の意味そのものも拡大し、何でも気に入らない言説は「ステマ」、単なる商品紹介や、ヘイトを向けられた企業への擁護的な発言も「ステマ」とか、とりあえずステマと言っておけば相手を罵倒できるという感じもあったと思われる。

「ネイティブ広告」は2014年初頭から登場

先ほどのグラフから「ステマ」を抜いたものを見てみる。「インバウンドマーケティング」は2012年の2月からグラフが上がり始めている。「ネイティブ広告」は2014年1月に急上昇し、2014年7月と2015年5月にピークがある。

この2つのキーワードは、高広伯彦さんが深く関わっていた(いる)という共通点がある。そして「インバウンドマーケティング」も「ネイティブ広告」も、消費者を騙すような「マーケティング」や「広告」の悪印象と、正反対の方向性を志向したものである。

それだけに「インバウンドマーケティング」も「ネイティブ広告」もけっこう理解しにくい。既存の「マーケティング」や「広告」の印象をいったん捨てる必要があるが、普通に書かれた説明文を普通に読むだけで、そういう思考を働かせるのは非常に難しいと思う。
しかも、日本のネットにおいては「ステマ」騒動による「マーケティング」や「広告」というモノへの不信感、嫌悪感、とりあえず叩いておけばいい感が強く、感情のレベルに受け入れがたい/理解しがたいものが強くあっただろう。

高広さんは先述のセミナーにも登壇され、そこで語られた「ネイティブ広告」の定義は非常にわかりやすく腑に落ちるものであったが、セミナーの内容を書いていいのかわからないし、ただ要約して書いだけで伝わるものでもない気がするので、とりあえず省略しておく。

当時は、2012年から2013年にかけてこんなことがあったり、

イケダハヤトくんとの対談、実現できず。 | mediologic.com/weblog

[徳力] 結局、徳力は、やまもといちろうさんとイケダハヤトさんのどっちの味方だったんだという質問への回答。

こんな小競り合いめいたやりとりもあちこちであったり。

やまもといちろう 公式ブログ – LINE発炎上系プロデューサー谷口マサト氏爆誕 featuring 高広伯彦氏 – Powered by LINE

マーケティングや広告業界のキーパーソンと有象無象があちこちで燃え上がっている時代でもあった。過去形で片付けるのは適切でないかもしれないが。

「ネイティブ広告」として何が語られていたのか?

あらためて、はてなブックマークで「ネイティブ広告」で検索して人気記事を調べてみると、このあたりが出てきた。

男・徳力基彦、ネイティブ広告の時代の勘違い野郎共に物申す(山本一郎) – 個人 – Yahoo!ニュース
考えてみれば、ペイパーポストという手法は、まさにダメなネイティブ広告の走りであったとも言えそうですね。

ネット広告業界には、ユーザー視点で考えれば当然に思えることが、見えなくなってしまう人が意外に多い気がするのは何故なんだろう。そんなことを感じるようになったのは、私がアジャイルメディア・ネットワークの立ち上げを手伝うようになる前のこと。2006年の頃の話です。
ユーザー目線で考えよう、ここが変だよ「ネット広告業界」 | AdverTimes(アドタイ)

木村:ネイティブアド、いわゆる記事広告は書く人の数が限られるのでスケールしない。
ニュースアプリ各社はタダ乗り問題やネイティブ広告をどう見てる? | TechCrunch Japan

どうも2014~2015年ごろの「ネイティブ広告」に関する議論はおおむね「ネイティブ広告=記事広告の新しい呼び名」として、本来の(主に高広さんの語る)定義からすれば相当に関係ない場所であーでもないこーでもないと言っていた感じになるのだが、一方で「ステマよくない」というのは不動の真理であり、それはそれで定期的に議論されることには意味があるだろう。

我々が我々の考えるる「ネイティブ広告」を嫌ったりしようとも、どうも世の中の広告のトレンドはネイティブ広告になっていくようだ。昨今のSNSの広告はどこもネイティブ広告だし、その他のメディアでも多くなっていくのだろう。

いち消費者が「ネイティブ広告とは何か」を知ることにたいした意味はないかもしれない。「ネイティブ広告」は嫌だけど「インフィード広告」は親しみやすいですね、みたいな理解でも別に困らないといえば困らないだろう。結局何にどういう名前を付けるか、というのは関係業界内だけの問題のような気もする。

しかし、知らないところで意外と大きなディスコミュニケーションがあったんだなと思ったのと、何がどうしてこうなったんだっけなあと改めて確かめてみたくなったので書いてみた。