「VRビジネスの衝撃」(新清士)感想

久しぶりに目にした「~の衝撃」本「VRビジネスの衝撃」(新清士)を読んだ。今のVRのブームがどんなものかと、注目を集めるVRベンチャー企業「Oculus」の出自について知ることができる。

VRビジネスの衝撃―「仮想世界」が巨大マネーを生む
(NHK出版新書 486)
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「VRは実際に体験しないとよくわからない」ということを本書は述べているが、実際そのとおりで、読んでいてVR体験そのものについてはピンと来ない。VRゴーグルは致命的にダサいデバイスにしか見えないが、そこで得られる体験がダサさを克服して普及するのだろうか? それを否定する要素も特にないが。

しかし本題はそこでなく、VRのビジネス利用の現状と可能性を語るところにあり、その点では新書のボリュームの中にしっかりと情報がまとめられていて興味深く読んだ。1992年生まれのOculisの創業者Palmer Luckeyと、1970年生まれの伝説のゲームプログラマー(と本書では紹介される)John Carmackのエピソードなどは、同年代を生きてきた者としてもとてもエキサイティングだった。

一方でよくわからなかったのが、VRを「プラットフォームだから普及する」としてセカンドライフと比較し、「セカンドライフはスマートフォンで仮想世界を提供するアプリの1つのようなものでした。しかし、オキュラスリフト、プレイステーションVR、HTCバイブといったヘッドマウントディスプレイは、見方を変えれば、アプリを販売するためのプラットフォームなのです」と話を展開しているところ。

本書が「プラットフォーム」をどう定義しているのかわからないが、レイヤーは違えどセカンドライフもプラットフォームであってはずで、だいぶ説明が足りないように思える。比較するならiPhone後のスマートフォンとか何かしらのデバイスでもよかったように思えるし、セカンドライフとは時代背景も違いすぎて、どうも比較の基準がよくわからない。おそらく、セカンドライフは今でも「来る来る言われてたけど来なかったもの」の代表格で、VRはそうじゃないという論旨なんだろなと理解した。

という点は引っかかっているが、そうした話は本書のほんの一部。VRの現状を手っ取り早く知るために、大いに参考になる本だった。家庭や個人の生活にどれくらいVRが入ってくるかはよくわからないと感じたが、まずは大規模な娯楽施設において従来よりも低コストで安定供給できる新しいエンターテインメントとしてのVRに、大きな可能性がありそうだ。