ダニエル・ゴールマン「フォーカス」。人が努力に裏切られないため必要なこととは?

EQ こころの知能指数」「SQ 生きかたの知能指数」の著者であるダニエル・ゴールマンの新刊「フォーカス」が届いたので、さっそく読んだ。何やら過去の著書と違ってキャッチコピーが俗っぽく、どこかの自己啓発書のようだ。

心理学や脳神経科学の専門家であり、「EQ」で情動について、「SQ」で社会的知性について書き他者との調和、社会の中での人のありかたについて論じてきたゴールマン氏は、本書では「集中」や「共感」について論じている。

スポンサードリンク

最初は目新しさを感じない部分が意外なほど多く、戸惑った。冒頭の「スマートフォンやSNSのため我々は注意力散漫になっている」という話はあまりにも「ネット・バカEdit」に似通っていると感じていたら、そのままニコラス・カー氏と「ネット・バカ」の名前も出てきた。正直なところ、2013年の本(原著)なのだから、もう少し捻りがあってもいいと思わなくもない。

認知に関する「トップダウンとボトムアップ」という話は、ダニエル・カーネマン「ファスト&スロー」の「システム1とシステム2(速い脳と遅い脳)」と同じものを指している(なお、トップダウン=遅い脳 である)。

こうした近年の状況と知見を踏まえ、本書の中盤以降では他者への関心、自己が取り組むべきことへの集中、そしてリーダーのあり方について論じていく。EQ、SQ、そして集中のスキルを備えたリーダーのあり方が、ゴールマン氏の関心事なのだろう(過去にもリーダー論の著書がある)。

本書の見た目は自己啓発書めいているが、自己啓発書とは趣が異なる。「注意と集中の訓練法」というそれっぽい章もある(第17章)が、この章の内容は小学校や幼稚園で実施されている訓練方法の事例解説から始まるもので、訓練法そのものを教えるわけではない。だが、これら訓練法の本質に触れ、Googleで開発された「サーチ・インサイド・ユアセルフ」の情報などを集めていけば、訓練法の参考になるだろう。

先日他界された水木しげる氏の言葉に「努力は人を裏切ると心得よ」という言葉があり、Twitterで盛んにRTされるなどしていた。「集中」をテーマとする本書でも、集中せず時間をかけるだけの練習は成長の役に立たない、といった話がある。

これだけでは「そりゃそうだ」で終わる話なのだが、ゴールマン氏の著書の特徴は、脳や神経系どこがどう働いた結果どういう物質が出てきてそうなるのか? といった解説が詳細に行われる点だ。ただ教わったライフハックや自己啓発メソッドを実行するだでは納得できない。どうなってるのか理解した方が実践もしやすい、という方には一読をおすすめしたい。