バラバシの「バースト!」と優先順位の話

バースト!」は「新ネットワーク思考」の著者であるアルバート・ラズロ・バラバシ氏の2冊目の著書であり、2012年に出ていた本。だが当時、Webの信頼する読み手の方々が口を揃えて「よくわからない」「難しい」と書いていたのを見て、ちょっと後回し…と敬遠し、それきりになってしまっていた。

バースト!  人間行動を支配するパターン

しかし、私の中ではバラバシ氏と共に近年もっとも影響を受けた「SQ」の著者であるダニエル・ゴールマン氏の「フォーカス」の翻訳が今度出ると知り、これは「バースト!」を先に読んでおかねば! と読み始めた。

「フォーカス」と「バースト!」。おそらくは両者とも「選択と集中」的な人間の行動の仕組みや法則を探ることがテーマだろう。社会ネットワークや脳神経社会学をテーマにしてきた2人の著者がそれぞれ「人間の行動」をテーマにしていることには重要な意味があるのだろうと感じた。

私が一読して解釈したレベルでは、「バースト!」はこれといって難しいことを言っていない。ひとことで言えば、人間個人や共同体、はたまた動物などの行動には、長い停滞期と、ときどき来る活性期(バースト)がある、といったことだ。

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これを図にすると、バラバシ氏の前著「新ネットワーク思考」の最重要なキーワードであった「ベキ法則」が見えてくる、というのが本書の趣旨。ただ「ベキ法則とは?」という説明はされておらず、ほかの部分の文章からも、前著の読者であることが前提となっていると伺える。

また、何を縦横の軸にするとベキ法則となるか、というはっきりとした説明もない。非専門家向けの読み物として書かれ、プロの作家も顔負けと思える凝った構成となっているのだが、一方で数式は一切なく、そのへんはフィーリングで読んでね的なところが、もしかすると「よくわからない」につながるのかも、とは思った。

本書の大部分は、いかにしてバラバシ氏らがバーストを探求したかというエピソードと、中世のハンガリーを舞台にしたバーストの一事例に割かれている。

だが、本書の冒頭部の書かれ方は非常に(狙って)不親切だ。私自身、わけがわからない……と戸惑いながら読んでいたら、全28章中の第7章の結びに「第一章から本章までのあいだにしてきた話は、わけのわからない謎ばかりだった。」と書かれていて苦笑した。

バーストをコントロールする優先度

「バーストは優先度に絡んで起こる」とバラバシ氏は述べている。優先度を付けなければ人間の行動は単にランダムになる。優先度が決まることでバーストが起こる。もしも優先度を適切に付けられなければ、効果的なバーストを起こせないため生産性は上がない……程度で済めばいいが、間違った優先度を付けてしまうと、とんでもないことも起こりうる。

本書の最終章では、さまざまな思惑が絡み合って本来まったく意味のないことに高い優先度が付けられた結果起きた悲劇の結末が、手前でわざわざ「このあとにはかなり気分の悪くなりそうな話も含まれるので、それならもう読みたくないと思われる方もいるかもしれない」と断り書きを入れるほどの凄惨さで描写される。

人間の行動を予測するためにバーストという現象を追い、ちょっとしたライフハックのレベルから政治のレベルまで、優先度の操作とバーストの帰結を追いかけるのが本書である。そして、自分の人生は誰によって優先度を操作されているのか、自分の行動はどこまで自分自身で予測……予定と実行が可能になっているだろうか、などと考えずにはおれない(自分の意志でちゃんと決めてなくない? と愕然とする)。

バースト!  人間行動を支配するパターン 新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く

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