自己肯定感は資本である:自己肯定感をめぐる冒険(1)

ここ何年かこだわってきた「自己肯定感」について、連載コラム風に改めて整理してみたいと思います。

「自己肯定感」とはコミュニケーション術や心理学、育児、教育などの分野で目にする機会の多い言葉です。最近の若い人は自己肯定感が低くて大変だよねー、といった感じで。

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自分を無条件で肯定していいの?

広く共有されている明確な定義はないようですが、ここでは「自己肯定感」を、「何でもない(ありのままの)自分を、何の根拠も必要とせず全面的に肯定できる感覚」であると定義します。

似た言葉に「自信」「自己評価」がありますが、こちらは一般に何かしらの根拠に基づいて自分の価値を認めることだと捉えられるので、ちょっと違います。自己肯定感は自己評価の基本点だと捉えるのが、わかりやすいかもしれません。

この定義に基づいた、Webですぐ読めるリソースとしては、立命館大学教授 高垣忠一郎氏の講義のテキストがあります。人の役に立つ経験などから生まれる自己効力感から来る、機能評価を自己肯定感を呼ぶのでは不十分である。存在そのものが肯定される必要があり、評価が介在するべきではない、と述べられています。

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筆者が語り続けてきた「自分が自分であって大丈夫」という規定は,存在レベルの肯定である。機能レベルの肯定ではない。「できる」とか,有能だとか,役立つとか立たないとか,そういうレベルのものではない。むしろ,そういうレベルで評価されることなしには「存在」が許されないかのような状況への批判を込めた自己肯定感なのである。
私の心理臨床実践と「自己肯定感」 高垣忠一郎 退職記念最終講義

このような内容をマンガベースで読みやすくした解説が、育児書の「子育てハッピーアドバイス」にも書かれています。

自己肯定感は、人のあらゆる活動の安定のために必要です。例えば、何かに取り組むときに自分の背中を押す、失敗した自分の気持ちを収める、他者と積極的にかかわりを持つ。そういったことのために必要な、心のエネルギーを起こすもとになるのです。

一方で自己肯定感のない人は、失敗を恐れ消極的になり、失敗から立ち直りにくく、他者に声をかけることも「自分なんかが声をかけても嫌がられるだろう」と思ってしまって、なかなかできません。

言ってみれば、自己肯定感とは、人生における心の資本なんです。元手があるから、いろんな活動がやりやすい。元手がない人は動きが制限される。結果、心豊かになる機会も限られる。資本がないのは辛いのです。

自己肯定感がある/ないで「自分」の捉え方は正反対

自己肯定感は、赤ちゃんのころからの積み重ねで作られると言われます。言葉も発せられずに泣いたりぐずったりする自分がきちんと構ってもらえることや、たわいのないおしゃべりや遊びの相手をしてもらえる満足感が、自己肯定感につながっていきます。

自己肯定感がある人は、物心ついてからずっと「自己肯定感があって当たり前」の状態です。一方で自己肯定感がない人は、自分を肯定的に捉えるということがわからない。自分なんかが、なんで何もしていないのに肯定されるの? といった感じです。

先に、自己肯定感とは「何でもない自分を、何の理由もなく全面的に肯定できる感覚」だと述べましたが、これは言い替えると、自分の価値、自分が存在していいかどうかということを「そもそも疑わない」のだと思います。私は自己肯定感がない側なので、実際のところはよくわかりませんが。

自己肯定感のある人とない人で、「自分」の捉え方が正反対となり、また、お互いの立場になることが不可能であるため、相手の感覚がわからないのが、自己肯定感を考えることの難しさかもしれません。

自己肯定感にあふれた人が「笑顔で元気に挨拶しよう!」と無邪気に言っても、自己肯定感のない人にとっては、「自分ごときが笑顔を作って声を張り上げるなんて、そんなことしていいの? 怒られたり笑われたりするんじゃないの?」という感じであり、気軽に言われても困るよとしか思えないわけです。

とはいえ、社会は皆の自己肯定感があることを前提として動いていますし、自己肯定感がない人のそんな心配なんて、他人の視点からひどい言い方をしてしまえば、自意識過剰の被害妄想に過ぎません。とはいえ本人には重大な問題であり、しんどい認識のズレとなります。

これからの時代、自己肯定感はますます大切になる

繰り返しになりますが、社会は皆に自己肯定感があり、適切に他者とかかわっていけることを前提として動いています。実際、自己肯定感がない人にいちいち気を遣っていたら、コミュニケーションは滞り、世の中が回りません。

▼関連記事:
自分の「まともさ」を支える「自己肯定感」:社会ネットワークのひみつ(3) | Heartlogic

昔は、社会はもっと小さくて流動性のない組織でできていて、自己肯定感があろうがなかろうが役割を任され強制的に動かされることで、自己肯定感のあるなしによる差が出にくかったのだと思います。

ところが、個人主義が強まり自己責任での自主行動やらが求められる現代においては、自己肯定感のあるなし=積極的に他者とかかわれるか否か、の差はどうしても大きくなってしまいます。

そのため、これからの時代を生きるにあたって、自己肯定感の大切さは、ますます高まっていくと考えられます。一方で、自己肯定感を育む環境は、あまりいいとは思えません。

しかし、絶望的にダメなわけでもありません。まだ、自己肯定感がどのようなもので、なぜ大切で、どのようにすれば高めて/作って/育んでいけるのか、ということがあまり知られていないだけだと思います。

次は、自己肯定感があると、どのようないいことがあるか? を考えてみます。

▼次回
褒め上手・甘え上手の理由:自己肯定感をめぐる冒険(2) | Heartlogic

▼高島氏の著書「自己肯定感って、なんやろう?」(さっき知ったばかりで未読)

▼子育てハッピーアドバイス。読みやすく、育児に臨む人の緊張をほぐし、励ましててくれる、優れた育児書です
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