水泳好きも、バカも、肥満も「伝染」する:社会ネットワークのひみつ(2)

この文章は、社会的ネットワークと、その中での生き方について、息子(2013年現在、小学校1年生)が小学5、6年生ぐらいになったときに読んでくれる、という想定で書いています。

息子と、これから息子と関係していく方達に、何かの役に立ててもらうことができれば嬉しく思います。


前回「地球は丸かったし、世界はネットワークだった」では、前回は「社会(人間のネットワーク)はインターネット(機械のネットワーク)と似ている」という話をした。では、そこでどういうことが起きるのか? が今回の話。

ネットワークでは、自分が周囲に、また周囲が自分にと相互に影響し合い、お互いが変化していく。

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例えばインターネットでは、どのコンピューターと接続しどんな情報をやりとりするかによって、自分の端末でできることが変わる。ゲームアプリを立ち上げてネット対戦を始めれば対戦を楽しむことができる。もしもウイルスが送られてきてしまったら、端末が壊れるかもしれない。周囲の影響で、楽しいことも悲惨なことも起こる。

人間のネットワークでも同じようなことが起きる。例えば、小学1年生の君はサッカーが好きだ。幼稚園のときからサッカー教室に入っていたし、小学校に上がってからは、少々レベルが高い(と思われる)新しいサッカー教室に入った。

関心がないとリンクせず、影響は薄くなる

幼稚園のときの君は、特に上手な子を「自分とは異次元の存在だ」という感じで見ていたんじゃないかと思う。つまり、あのレベルに自分が行く必要はないという感じで、ある意味で関心が切れてしまっていた。しかし、新しい教室ではみんな上手だから、自分もそのレベルを目指さないと! と気持ちが変わったんじゃないかな。

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コーチたちも、より高いレベルを目指して指導しているはずだから、きっと君はレベルアップできる。そのときに、いちばん大事なのは「サッカーがうまくなること」への関心を持って、うまい仲間や、勝ちたいという気持ちの強い仲間、それからコーチたちとつながることだ。そうすれば、1人のときよりもハイペースでうまくなることができる。

君は水泳も好きだ。あまり水泳が好きでなかった子が、君と同じ教室になったことで、やる気になって上達のスピードが格段に上がったと聞いた。好きな友達が水泳好きなら、自分も水泳を好きになるチャンスになる。結果、2人はもっと水泳が好きになり、上手になっていく。そして、水泳の先生や、水泳が好きな友達と親しくなる可能性が高まる。そうすれば、もっとうまくなるチャンスが増える。

バカのスパイラル

もちろん、よくない方向の影響も起こり得る。

勉強嫌いで怠け者の友達ばかりとつき合っていると、周りは誰も勉強をしないから、勉強をしないことが普通だと思えてくる。「宿題なんてやってらんねーよ」「それより遊ぼうぜ!」みたいに言う友達に囲まれて、自分だけ勉強する姿なんて、想像できるだろうか?

こういったものは、関心がどうかとはあまり関係がなく「人は安易な方向に流されやすい」という習性にどれだけ歯止めがかけられるか? の問題になる。まあ、勉強するよりもしない方がラクであることは間違いない。

小さな影響による小さな変化が時間をかけて積み重なることで、人は変わっていく。もしかすると未来の君は勉強嫌いになっているかもしれないが、周りの友達はどうだろう? あまりにも勉強が嫌いで、勉強をしている人が周の友達にいなかったら、そもそも「勉強をする」ってどういうことなのかが、わからなくなってしまう。

結果、ますます勉強が嫌いになるし、勉強をする友達とは気が合わなくなる。そして、どんどん勉強嫌い同士が集まるようになる。「ちょっと勉強が嫌い」だった子が、周りと影響し合うことで「勉強嫌いネットワーク」を作ると、「ものすごく勉強が嫌い」になってしまうわけだ。

自分が勉強しない→勉強嫌いが集まる→ますます勉強しなくなる というように、何かが連続することで歯止めがかからなくなること、相乗的に効果が増していくことを「スパイラル」(「渦巻き」のこと)と呼ぶ。これは、いわばバカのネットワークによって、バカのスパイラルが生まれてしまう状態だ。

似たような話で「肥満は伝染する」という説がある。日常的に太りやすい食べ方をしていたり、運動する機会が少なかったりして、太りやすい生活習慣の人に囲まれて育つと「太りやすい生活」が当たり前になってしまう。

そうして周囲の生活習慣が「伝染」した結果、自分も太る。そして家族全員太っている、という一家ができたりもする。つまり、周囲と影響しあった結果、みんなで肥満になる。周囲に影響されて変わっていくことを「伝染」と言っているわけだ。

肥満についてはもちろん例外もあって、体質によっては自分だけ太ったり太らなかったりすることもある。また、周囲があまりにバカなので自分は勉強しないと! と発奮するケースだってある。が、一般的には、周囲の影響を少しずつ長時間受けることで、周囲と同じようになってしまうことが多い。

自分自身だけで変われないときは、周りの環境を変えることも考えよう

見方を変えると、自分を変えたいときには、自分を変えられるネットワークに身を置くことを意識すると、意外と効果がある場合が多い。例えば、太らない生活をしている人たちと一緒に暮らせば痩せやすくなるし、「勉強をするのが当たり前」だと思っている人たちと付き合えば、自分も勉強ができるようになる。

君はおそらく、これから、何度も「自分を変えたい」と思うことがある。そのとき、自分ひとりがもがいてもうまく行かないかもしれないが、ときには、ちょっとした出会いから大きく変わることがあるかもしれない。

どちらのときにも、自分は周囲からどんな影響を受けているか、また周囲にどんな影響を与えているかを、ときどき確認してみてほしい。それが、自分のいる世界を知ることになる。

周りを変えようとしたとき、方法は2通りある。付き合う相手を変えることと、付き合う相手は変えず、相手の中身を変えることだ。後者は簡単なことではないが、君にはわりとノリで周囲の空気を変えるパワーがある気がするので、挑戦してみてもいいかもしれない。また、私たち両親には、変わるべきときに変わる努力をする用意がある(努力した結果までは安易に約束しないでおく)。

今回も話をまとめよう。

ネットワークの中で暮らす私たちは、周囲からの影響を受けながら生きている。うまく、正しく、よく生きることとは、自分自身がどうするかだけでなく、どのような人とどのようにつながるか/つながっているか、ということも、非常に重要な要素だ。

自分のいい面も悪い面も、周りの影響によって作られた部分が意外と大きい。そのことを意識しておこう。ときには周りの人たちに感謝を。またときには、ダメな環境だと思ったら脱走してもいい。


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自分の「まともさ」を支える「自己肯定感」:社会ネットワークのひみつ(3)


写真は水族館の魚。自然の生態系も一種のネットワークで、食ったり食われたりの影響を与え合っている。水族館の水槽の中に作られるサカナ社会もまた、小さなネットワークと言えるんだろう。そこでは、お互いが生活しやすく、食ったり食われりしないよう、組み合わせや飼育環境に配慮がされているらしい。海藻なども含めて。

「肥満の伝染」については、以前にニュースサイトが記事を載せていた。

「肥満もネットワークで伝染」疫学調査結果が引き起こした騒動 « WIRED.jp