下田・甲州屋
その1
湯ヶ野を発つと、海の向こうに伊豆大島が見えた。
山越えの険しい道を行く。僕は男と並んで、少し先を歩いていた。
踊り子が、自分の背丈よりも長い太い竹を持って、走っておいかけてきた。
ξ*゚?゚)ξ<これ、杖がわりに使ってよ!
近くに立てかけてあったものを取ってきたらしい。太い竹は盗んだのがすぐバレてしまうよと言うと、踊り子は走って引き返し、
ξ*゚?゚)ξ<こ、これならいいわね!
と、さっきよりも細い竹を持ってきてくれた。
その2
ξ*゚-゚)ξ<それは、差し歯にすれば問題ないわ
と、後ろを歩いていた踊り子の話し声がふと耳に入った。踊り子は年上の娘たちと、僕の歯並びについて話していたらしかった。
いつもの僕なら非常に気になって聞き耳を立てていたかもしれないが、踊り子がそんなことを話すことについては何とも思わなかったし、特に気にもならないほどに、気持ちが通じていると思えた。
しばらく小さな声での会話のあと、
ξ*゚▽゚)ξ<いい人だね
ほんとうにいい人だね、と、娘たちの会話が聞こえた。
それは何も裏のない、開けっぴろげな響きで、僕も自分自身を、いい人になれた素直に信じることができた。晴れ晴れとした気分だった。
その3
下田に着いて、甲州屋という木賃宿の前で踊り子たちと別れた。
僕は踊り子たちを映画に連れて行くと約束していたので、迎えに行った。しかし、上の娘たちは歩き疲れて、とても行けないということだった。
踊り子は一人で僕と一緒に映画に行きたいと言ったけども、おばさんがどうしても承知してくれなかった。
ξ*u_u。)ξ<ダメだって……
僕は一人で映画を見た。しかし、すぐに出た。
宿の窓にもたれて、いつまでも夜の町を眺めていた。どこかから太鼓の音が聞こえてくるような気がして、わけもなく涙が出た。
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