「学問」だけでなく感情にも目配りされた内容。書評「サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な『答え』が出ている(西内啓)」
「論語なう」と合わせて、おなじマイナビ新書の「サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な『答え』が出ている」を買っていました。@MYNAVI_SHINSHOさんのツイートを見て気になっていたもので。マイナビ新書さんのツイッターマーケティング力はすごいものですよ。
本書のタイトルを最初に目にしたときは「キミ達の悩みなど、すでに学者の皆さんが解決済みであるからして、今どきそんなのに悩んでるなんて無意味だしついでに無知だよ!」的な感じかと思ったのですが、そういうトーンではありませんでした。
わずか240ページの新書にネタを詰め込みまくっているためかなりの駆け足な印象がありますが、「すでに学問的な『答え』がでている」ことに今も悩む人たちの気持ちに寄り沿って書かれた、わかりやすい、いい本だと思います。
本書は以下の6+αの「サラリーマンの悩み」について、経済学や心理学など社会科学の知見を総動員して、悩みの発生する原因と、その解決法を「学問的」に解説するものです。
第1章「なぜ、いくらがんばっても給料が上がらないのか?」
第2章「なぜ、お金が貯まらないのか?」
第3章「どうすれば楽して出世できるのか?」
第4章「どうすれば職場の人間関係はうまくいくのか?」
第5章「どうすれば仕事はうまく回るのか?」
第6章「なぜ、いくら仕事をがんばっても家庭がうまくいかないのか?」
終章「それでも悩みのつきない日々をどう生きれば良いのか?」
本書のいいところは、タイトルに反して「学問的な『答え』」を単に紹介するだけでなく、答えを知っててもなかなか実践できないよねー、というところもフォローされている点です。
例えばリーダーシップについて(第4章)」では、ひととおりの説明を終えた後で、第4章で解説したリーダーシップの複数種タイプと、第3章で解説していた個人の得手不得手のタイプについて触れ、このように書かれています。
自分自身のこうした強味に加えて、部下なり上司なりの強味をさらにうまくかみ合わせることができれば、あなたの仕事は飛躍的にうまくできることでしょう。
(「サラリーマンの悩みのほとんどにはすでに学問的な『答え』が出ている」p.148より)
各章の内容は、それぞれに悩んで本などを読み漁った経験のある人ならば、知っていることが多いかもしれません。しかし、このような一段踏み込んだアドバイスまで書かれている本は、意外と少ないのではないかと思います。
いわゆる自己啓発書には、成功した経営者が主観的な視点から「俺のやり方はこうだ!」と書いた本が多くあります。しかし本書の著者の西内氏の本業は研究者であり(プロフィールを見ると今は調査や戦略コンサルをされていると書かれていますが)、全編客観的な視点から書かれています。
本書には自己啓発書の定番要素であるところの成功事例は一切なく、「これをやればこんなに成功できるんだ!」的なカタルシスを与えてはくれないので、好き嫌いが別れるかもしれません。
また、読みやすさを優先したためだと思いますが、学説や学術的なキーワードが次々と出てくるのに参考文系の類が紹介されておらず、もうちょっと詳しく知りたい、というときにはモヤモヤとした感じが残ります。そのかわり、各章の最後に1冊ずつ文献が紹介されているので、その本を読めば章の内容は掘り下げられる、ということでしょう。
本書で出色だと感じたのは、終章の「それでも悩みのつきない日々をどう生きれば良いのか?」です。ここまで悩みながら苦労しながら、俺たちはなんで生きてんの? 幸せって何なの? というところについて、現代の社会科学が出しうる答えを、学問的なドライな書き方ではなく、感情的にも「腹落ち」できるよう腐心しつつ書かれている、という印象を持ちました。
サラリーマンに限らず自営業者でもノマドワーカーでも、仕事と家庭生活に関する悩みを解決する糸口を見つけて、残り半分ちょいの2012年を有意義なものとするれために、役立つのではないかと思います。
- 2012.05.04
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