AppleとGoogleのクラウド戦略の比較。あるいはGoogleがまたイマイチかもしれない可能性  

Appleの「iCloud」発表を受けていくつか興味深い記事を読んだので、メモしておきたいと思います。

AppleにとってのデジタルハブはMac→iCloudに

この10年間、Appleはパソコンを、ユーザーのあらゆるデジタル音楽や写真、ビデオ、文書などを保存、管理する中央デジタルハブとして扱ってきた。(中略)この秋にiOS 5が公開された時、Appleはこのデジタルハブを、iCloudでオンラインに移すつもりだ。
Apple、デジタルハブをMacからiCloudへ移行

AppleはiCloudを「デジタルハブ」と位置づけると。デジタルハブとは何ぞやといえば、「データの中継点(かなりのデータについては集積もするよ)」といった感じで捉えておけばいいでしょうか。

一方で、Appleにとって、MacやiOSデバイスはハブではないけどプラットフォーム(ここでは各種アプリケーションの土台であるOSの役割)であり続けます。それは言ってみれば当たり前で、異なるユーザーエクスペリエンスを提供するために2つのOSを出しているわけで。

Appleにとってのクラウド(iCloud)=ハブ/Googleにとってのクラウド=プラットフォーム

一方で、「The web as platform」の具現者であるGoogleにとって、クラウドとはプラットフォームです(当然ながらデジタルハブ機能も内包)。その点で、下記記事ではGoogleの方が「徹底している」と評しています。

Apple社の戦略は、競合相手と比べてどうなのだろうか。米Google社のクラウドは、Apple社のクラウドよりも徹底している。Apple社はクラウドを自社サービスのハブと見なしているが、Google社の『Chrome OS』では、クラウドをコンピューター自体として扱っている。
ポストPC時代の「Apple対Google」 « WIRED.jp

一方で、Androidは「徹底」しておらず、Googleの方針との食い違いを生んでいると指摘します。

Androidは、クライアント・アプリケーションを実行するという点でiOSに似ているが、これによって、ウェブ中心というGoogle社の方針との食い違いが生まれているのだ。5月に開催された『Google I/O開発者会議』でも、これら2つのシステム間の不一致は明確だった。
ポストPC時代の「Apple対Google」 « WIRED.jp

Googleは人間の能力やネットワーク環境を高く見積もりすぎていないか? という疑問

何かが「徹底している」ことが、必ずしも商業的成功をもたらすわけではありません。むしろ、マニアックになりすぎて付いてこれる人が減ったり、ピーキーすぎてお前にゃ無理な感じになったりしがちなものです。

Chromebookのストイックさもどうなのか? と思っていたところですが、どうもGoogleのプロダクトには、人の平均的なITリテラシーや思考力や合理性を、高く見積もりすぎているのでは? と思うものが多いです。

Google Buzzも自由すぎる+殺風景+Gmailのコンタクト全部持ってこられても困るよ状態だったし、Google Waveも高機能すぎて、そもそも機能の把握に時間がかかる状態でした(αやβだったからということもあるでしょうが)。

何だかんだでTwitterが定着しているように、シンプルであること、明確に「これ以上はできない」ラインがあありその範囲内でいろいろ使えること、「これができる」という単純なイメージを提示できることは(技術の問題ではなくマーケティングの問題として)強い。しかし、これに関してGoogleは弱く、それはGoogleの中の人たちが超天才ぞろいで、超充実したデジタル環境で過ごしていること(推定)と関連するのではないか、などと穿って考えてしまいます。

「同期」はピンと来ないが「保存したのをプッシュするよー」ならグッと来る

WWDC 2011のキーノート全文を聴いて/読んでいないので詳細は把握していないのですが、Appleはアプリに注目しており(上記のようにMac/iOSをプラットフォームとしているわけですから当然)、また、iCloudの説明では「同期」ではなく「保存」と「プッシュ」という言葉を使ったのだとか。

「同期」(sync)ということばが使われていない点に注目。今日のキーノートでも「同期」ということばは一度も使われなかったと思う。代わりに使ったことばは「保存」(store)と「プッシュ」(push)だった。 iCloud の意味するもの « maclalala2

ふーん…ぐらいにしか思っていなかったのですが、「同期」という言葉には魅力を感じないけれど、「保存したものをプッシュ」だと俄然魅力を感じる! という層は確かに存在するようです。

「同期」を意識しないでよくて、自動的に同期されるとは・・・!
クラウドが苦手な私がiCloudは「クラウドの再定義」だと感じた理由 - もとまか日記Z

上記のブログ記事は、「クラウド」とか「同期」の技術について多少なりとも勉強した人が読むと「何を言ってるんだ?」という感想になるかと思います。

しかし、ちょっと考えてみると「クラウド」や「同期」というのは「お勉強が必要な言葉。お好きな人はキャッチアップなさったらいい概念」で、一方「保存」や「プッシュ」は理解しやすい既存の概念です(日本語にするとニュアンスが若干変わるのだと思いますが)。

私は「もとまか日記Z」を隅々まで読み込んでいるわけではありませんが、もとまかさんのように、iPhone/Androidアプリを開発される方、しかも、はてなブックマーククライアント(当然サーバーとデータを同期してる)の「はてブポケット」などを開発されていて、興味をもったモノについては驚くほどマニアックに調べる方が、さらっと「クラウド苦手」とか「同期するのが面倒くさい」と書かれることには、技術コミュニケーションの深さを思わずにおれません。そして、Appleのうまさがこういうところにあるのかなと(よくわかっていませんが)。

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