急速な時代の変化を追いかけるWebレポートが書籍化:「生き残るメディア 死ぬメディア—出版・映像ビジネスのゆくえ(まつもとあつし)」
まつもとあつしさん(@a_matsumoto)がASCII.jpで連載しているレポート記事のまとめ+αによる新書。まつもとさんより献本いただきました。
生き残るメディア 死ぬメディア 出版・映像ビジネスのゆくえ (アスキー新書) 
アニメやゲーム等のコンテンツを手がけるプロジェクトマネージャーであるまつもとさんの興味の方向性と、電子書籍だ動画配信だといった時代の流れががっちりと重なったところで出てきた、会心の一作といった趣です。
内容は、新興メディア(電子書籍や動画配信サイト)——書名になぞらえれば「生き残る」側か? と予期させるメディア——のキーマンへのインタビュー集と、著者による考察、巻末にデータ集、といった構成。2つのWeb連載を中心にまとめたということもあり、本としてのまとまりは若干緩いかなという印象もあります。
とはいえ、こうした足の速い情報を紙にして残すぞ、という企画はグレイトであり、インタビューとして業界キーマンの指向をトレースできるというのは、価値あることです。インタビュー形式の記事で登場する方々は以下。このあたりのキーワードにピンと来たら、手にとってみるといいかと思います。
- 「文化通信(出版業界紙)」編集長 星野渉氏:出版業界と電子書籍について概況
- ボイジャー 荻野正昭氏:電子書籍の現在と今後
- 角川「BOOK☆WALKER」運営担当取締役 安本洋一氏:BOOK☆WALKERの戦略
- ドワンゴ社長 小林宏氏:「ニコニコ動画」の2010年下半期以降のビジネス展開
- Google 徳生祐人氏:「YouTube」の収益化戦略とライバルへの対抗策
- Gyao(?)社長 川邊健太郎氏:Gyaoのビジネスモデルの転換とライバルとの関係
- ドワンゴ取締役 夏野剛氏:テレビ論、動画コンテンツを取り巻くプラットフォーム論、もろもろ
それにしても感慨深いのは、この1年足らずのトピックをまとめた本書のネタが、すでにところどころ古くなってしまっている点です。「フリー」の続刊的存在として(著者違いますが)「シェア」が発売になり、東京都の青少年育成条例改正案は可決され、電子書籍の広告モデルを実践した「Jコミ」が登場しました。このあたりはASCII.jpの連載でのフォローを期待したいところです。
旬のネタを追う際、最新情報はWebに載せることでフットワークを高め、アーカイブは紙の書籍にすることでWebで過去記事を追うよりも読みやすくし、双方のメディア特性を生かしつつ、双方からの新規読者を取り入れつつ、という手法には大きな可能性があると思っています。本書とASCII.jpの連載はおそらく“結果的に”そういう状態になっているのではないかと思うのですが、今後どのような展開がされていくのか、注目しています。ごく個人的には、Webと書籍では別の編集者がいた方が全体の作業を効率化できるのかな……というあたりも。
- 2010.12.29
- [読書・書評]
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