脳の機能的制約を前提とした情報整理術を説く「グーグル時代の情報整理術」
Googleのサービスで情報整理しようぜ、という本ではなく、Googleの元CIOである著者ダグラス・C・メリル氏が、持って生まれた失読症というハンディを克服し、Googleなどの企業で仕事をこなすための考え方(整理術の原則)を紹介するという内容です。
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メリル氏は、人間の脳を長所も短所もある1つの装置として考え、脳という装置が持つ制約を「くぐり抜ける」ための手段を講じる、手法を実行することが重要だと説きます。自分の「脳」とは自分そのものであり、それに限界がある、機能的な制約があるという認識を得るのは、簡単なことではないと思います。本書では、まずそこの発想を転換して、装置の機能に合わせた手法を取るべきだ、という考え方を提示します。
また現代社会のシステムについて、工場労働者を働かせることを基準に作られた、現代においては「どうしようもなく間違った」システムであるとし、その制約に対してもくぐり抜けるべきだとします。そして、個々人を縛る物理的、心理的、社会的制約の存在も具体的に認識し、これらをくぐり抜ける、または無視する、思い込みに過ぎないのなら捨ててしまえばいい、とします。
いくつかの仕事術本を読んで分かったのは、要するにどの本もメタ視点、メタ認知、メタ思考がキモだと説いている、ということです(そして、メタ視点から考えるということをすっかり失っていた自分にも気付かされました)。本書も、人間の脳、現代社会、そして自分自信の脳や生活環境、周囲との関係といったものをメタ視し、効率よくやっていく手段を考えよう、といった趣旨になります。
メタメタ言っるだけでは具体的な行動に移すのは難しいわけですが、本書では20の「整理術の原則」を軸に、ノウハウが語られます。例えば、
(1)脳の負担がなるべく少なくなるように、生活を組み立てよう
(10)エンジンをかける前に、どこへ向かっているのか、どうやって向かうのかを明確にしよう
(14)大きなかたまりを、小さなかたまりに分けよう
(20)仕事とプライベートのバランスを取るのではなく、融合させよう
といった具合。これらについて、メリル氏の体験談がちょっと濃いめに交ざって語られるため、手っ取り早い「情報整理術」を求める向きには冗長だと感じられるかもしれません。しかし、幼少期から失読症に苦しんだり、突然恋人が不治の病におそわれ多大なストレスに晒されたり、Googleの株式上場の際に1人で仕事を抱え込んで体を壊したりといった得難い経験談を読むのも悪くありません。
本書ではまた、ハウツーのパートもあります(Googleのサービスの紹介が多いです)。例えば「情報は整理するのでなく検索しよう」としてGmailの活用を説いていますが、人によってはそこはEvernoteでいいんでないの? となると思います(私もそうなります)。このあたりは著者自身も「整理術は人それぞれ」としているとおり、参考程度として読み飛ばしてしまってもいいと思います。そうすると全体の1/4ほどを読み飛ばすことになりますが。
ちなみに、「失読症」についてちょっと調べてみると、
一方でディスレクシアの人は一般人に比べて映像・立体の認識能力に優れていると言われ、工学や芸術の分野で優れた才能を発揮している者も多い。これは左脳の機能障害を補う形で右脳が活性化しているためと考えられており、最近では困難さの克服と共にこうした能力を伸長させる試みも行われている
ディスレクシア - Wikipedia
といった記述があり、レオナルド・ダヴィンチやトーマス・エジソンなどの有名人が失読症であったと紹介されています。それ以上に深くは調べていないのですが、そういう特殊な脳のつくりの人が記した仕事術の本、という点にも価値を見いだせるかもしれません。
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