重要な原則は「ユーザーの参加」か。江渡浩一郎「パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則」
以前からクリストファー・アレグザンダーの「パタン・ランゲージ」に興味を持っていたものの、ちょっと概要に目を通した程度で置いてしまっていました。本書が出ると聞いて速攻で予約し、先日ようやく積読状態から消化したところです。アレグザンダーの足跡からパターンランゲージ、XP、Wikiに渡る、とてつもない情報量をまとめ上げることが、まず大変な作業であったと思います。それが数時間で読み切れるようになっているのだから、まったくもってありがたいことです。
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アレグザンダーは1936年生まれの建築家で、1977年に「パタン・ランゲージ」という本を書きました。パタン・ランゲージとは何かを私なりの解釈で言うと、こういうことです。
ユーザーと開発者の間を埋める「パタン・ランゲージ」
例えば家を建てるとき、そこに住む人(施主)は「こうしたい」、「こういうのはいやだ」といった要求を持っています。でも、住む人は建築のプロではないから、「こうしたい」をどうやって実現すればいいかは分かりません。
一方、建築家は建築のプロではあるけども、住む人がどういう家を求めているかを完全に汲み取り、反映することは難しい。施主側に建築の知識がなければ事前に十分なヒアリングをすることも難しく、作っている途中で「あれはやっぱりああしたい」とか「ここはイメージと違った」みたいな話も出てきます。建築家に任せきりにすると「作りたい家」や「作りやすい家」を作ってしまい、住む人は何となく釈然としないものを感じつつそこに住む、ということになってしまうおそれがあります。
そこで、住む人の「こうしたい」、「こういうのはいやだ」という言葉と、建築家の「どのような建築をすれば良いか」という考えの間を埋めるための問題解決法であり事例集が、パタン・ランゲージである、と、そんな感じに認識しています。
こうしたパタン・ランゲージの考え方、ユーザーの言葉と制作者の言葉を埋めるものというのは、建築以外のさまざまな世界においても需要があると考えられます。それをソフトウェア開発に当てはめたのが、ソフトウェアのデザインパターンです。
本書では、エクストリームプログラミング(XP)も開発プロセスへの応用であり、Wikiもまた、コンテンツ制作にパタン・ランゲージの考え方を応用したものであると指摘しています。なるほどなるほど、Wikiとはどうも縁遠かったもので、Wiki関連の記述では、目から鱗がポロポロ落ちる思いでした。
キモは「エンドユーザーの参加」
本書を読み、つまり、パタン・ランゲージのキモは「エンドユーザーの参加」なのだろうと感じました。
アレグザンダーがパタン・ランゲージなどを考えることになるきっかけは、都市計画によって短期間で作られた町(本書でいう人工都市)と、長い時間をかけて作られてきた町(自然都市)の違いでした。人工都市にはどこかよそこそしい感じがあり、自然都市には、人工都市にはない落ち着きや、生き生きとした感じがある。その違いは何なのか? というところから、パタン・ランゲージに至ります。
パタン・ランゲージに至る試行錯誤の中で、彼は「都市ってのは思った以上に複雑な関係性でできあがっている」ということを発見し、そして、パタン・ランゲージ(パターンの原理)のほかに、「利用者の参加」や「漸進的成長」といったことも重要であると発見します。
と、これは、建築やソフトウェアに限らず、世の中のあらゆるモノやメディアが向かうべき方向性なのではないかと思います。
だからこそ本書の副題(?)に「時を超えた創造の原則」と付いているのでしょう。もちろん、アレグザンダーの著書「時を超えた建築の道」へのオマージュでもあるのでしょうが。
- 2009.09.27
- [コミュニケーションの話(ソーシャルメディア、社会の話) | 読書・書評]
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