マーケティング担当者を(たぶん)勇気付ける本「グランズウェル」
分類するなら、CGMマーケティングとかカンバセ-ショナルマーケティングとかそういう手合いの本。なんでわざわざ「グランズウェル」という新しい言葉を持ち出しているのかと、問題の枠組みがそもそも「(実態としては広報・宣伝・販促であるところの)マーケティング」とは違うためだ、と解釈した。
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「グランズウェル」とは「大きなうねり」といったような意味で、個々人がエンパワーメントされたこんにちにのWebを指している。第一章のはじめに、Diggが遭遇したHD DVDの暗号解除キー騒動が取り上げられる。さらにその後、ネットでのいわゆる「祭り」的な事例がいくつか簡単に紹介される。
ここまでを読んで、私は正直なところ「それって集団ヒステリーだよねサイバーカスケードだよね。ネットの暗部だよね。『グランズウェル』はそれを賛美するのか??」という感想を持った。そんなの別に良いことじゃない。規制規制言いたくはないが、何か考えねばならない部分ではないかと。
でも本書の著者たちは、そういった過激なものもまた「グランズウェル」の一部だと指摘したかったようだ(または、洋書によくあるセンセーショナルな「掴み」か)。第二章の冒頭で「第1章を読んで、グランズウェルは基本的に『問題』だと感じた人もいるだろう」とやられる。やられた!
本書は以降、グランズウェルの構造的な解説に移り、そのうねりに飛び込むための心構えを伝える。そして、グランズウェルに対し若干腰が引け気味の読者(私)に対し、「耳を傾ける」、「話をする」、「活気づける」、「助け合いを支援する」、「統合する」と、活用法を無難なものから段階的に、豊富な事例を交えて紹介する。
すると、第一章では(まんまと)眉をひそめた私めも「なるほどなるほど」と、グランズウェルとうまくやっていけそうな気になってくる。翻訳がいまいちで眠気が妙に高まる翻訳書も多いが、本書の訳はすばらしいと思う。全然寝られなかった。
本書はまず、CGMだWeb2.0だといった世界を「グランズウェル」と呼ぶことで、目の前でまさに起こっている、自分も巻き込まれつつある大激流だというような具体的なイメージを植え付けた(私に)。そして、真正面から対峙し、コミュニケートしていく方法を、じっくりと丁寧に紹介してくれた。
そして、そのためには「マーケティング」という名でしばしば語られがちな小手先だけの手法ではどーにもならず、グランズウェルに耳を傾け、前進を寄り添わせ、棹さして共に流れていくような姿勢が必要である、ということを、改めて認識させられた。
本書を読んで疑問に思った、で、日本ではどうなの? という点。本書に日本の事例はない。日本のネットユーザーの気質というのは、アメリカとはまた異なるのではないかと思う。おのずと「グランズウェル」のうねり方も違うのではないか? 本書にある事例に類似した国内の事例を紹介し、展開の異なる点、同じであった点を見ていくような文書なり勉強会的なイベントなりがあったら、ぜひ、と思うのだけど。
なお、本書の訳者は元AMNの伊東奈美子さんで、AMNでのプレゼントなどもしていたようだが、私はその当時のアナウンスをすっかり見逃しており、2009年になってから普通に自腹で買った。








