はじめに:「人生の岐路」に、インターネットが力をくれる
インターネットが一般に普及しはじめてから十年以上。多くの方にとって、すでにインターネットは欠かせないものとなっているでしょう。そんな中、近年では新しいWebのあり方を論じた「Web2.0」がブームになるなど、だんだんとインターネットの形が変わってきている、とされています。
近年の新しいインターネットで注目されていることのひとつに、企業よりも個人が主役となり、ブログやSNSなどの表現ツールを利用して、声を遠くまで届け、広い範囲の人に影響を与えることが可能になる――「個人がエンパワーメント(力を与えられること)される」ということがあります。
では、エンパワーメントされた個人は、具体的にどんなことができるのでしょう? そしてエンパワーメントされた結果、私たちにどんないいことがあるのでしょうか?
インターネットで「いい経験」してますか?
多くの人にインターネットで「いい経験」をしてほしい、「いい経験」をする方法を多くの人に伝えられないものだろうかと、いつも考えています。
無料でコンテンツが見られたとか、オンライン割引で得をしたとか、そういったことじゃなく、インターネットを通じた交流の中で心がちょっと暖かくなるとか、インターネットを通じた人との出会いからその後の人生にプラスの影響を受けるとか、私(筆者)が考えている「いい経験」とは、そういったコミュニケーションを通じてのことです。
顔を合わせての(現実の社会で/ネットに対して言うところの「リアル」での)会話が減ってしまいがちな昨今、ネットのコミュニケーションで「いい経験」をすることは、私たちの暮らしを豊かにする上で、かなり大事なことなのではないかと思います。
インターネットは「小さな親切」が届きやすい空間
私たちはリアルの世界に生きており、必ずしもネットで「いい経験」をすることにこだわる必要はありません。それは確かにそうなのですけど、一方で、ネットにはリアルにない特殊な性質があり、そのために、リアルの自分が置かれている閉塞状態を打開するきっかけにできることもあります。リアルが辛いときにネットの世界が支えになることもあり、だから、インターネットの基本的な利用方法やその特徴について知っておくことは大事だ、と考えています。
その、インターネットが持つ特殊な性質のひとつは、強力なマッチング(求めるものを見つけられる)機能です。
検索エンジンの発達により、Webにある情報を探すことが容易になりました。また、ブログやSNSのような新しいツールは、「ブログ検索」や「フィード」といった多数の新しい技術を取り込んで、個人のメッセージを書きやすく、見つかりやすい……つまり、言いたいことを誰かに届けやすく、知りたいことを探しやすくしてくれます。
そして、日本のインターネット人口は約8,200万人(「インターネット白書2007」より)。今はWeb2,0だCGMだ集合知だといったムーブメントの中、ブログやSNSなどによって日々コンテンツがオニのように量産されている時代ですから、たいていの検索には何らかの答えが返ってくるようになっています
マッチング機能が力を発揮する分かりやすい例としては「インターネットではマイナーな趣味を持つ仲間と出会いやすい」ということがあります。友達みんなから「何それ?」と言われてしまうような趣味だって、Webで検索すればたいていは誰かしら同好の士が見つかります。最近ならmixiで検索してコミュニティを探す、という人が多いかもしれません。
このようなマッチングの力は、私たちの暮らしに身近なレベルでは「小さな親切を届けやすい」ということにつながります。
友達や家族に聞いても分からない困ったことをブログに書いたら、どこかの誰かからコメントで教えて貰える可能性があります。逆に、ふと読んだブログで何か質問が書いてあったとき、たまたま自分が知っていたら、その場で教えてあげることもできます。ユーザーどうしが教えあうQ&Aサイトも人気です。「知りたい人/こと」と「知っている人/こと」のマッチングが行なわれているわけですね。
100の労力で200以上の効果がある、かも?
このようなマッチングの力については、次のように考えることもできるでしょう。自分のための記録としてブログを書く行為を「100の効果を期待して100の労力で書いた」と考えるとき、そのブログを他の誰かが読んで参考にしてくれたら(例えば10人が10ずつの効果を得てくれたら)、それは、投入した労力を超え、200の効果を生んだ、と考えることができます。
ちょっとした空き時間にインターネットにアクセスして、たまたま見つけた質問の答えを知っていたので教えてあげられたら、5ぐらいの労力で相手に50ぐらいの安心や喜びをあげられるかもしれません。教えてもらった感謝の気持ちを書いたら、答えてくれた人や周りの人に、さらに大きな良い気持ちを返してあげられるかもしれません。
こんなふうに、リアルでは流通しにくい小さな知識や、前向きな気持ちを漏れなく集め、上手にふくらませてポジティブスパイラルを回していいくいくエコシステムのような場として、インターネットを捉えることも可能なのではないかと考えています。
一方で、ネットならではの難しさも
一方で、インターネットでは文字を中心としたコミュニケーションとなるため、誤解が生じやすくコミュニケーション不全を起こしてしまいやすい、という難しさがあります。よくある例では、メールに「違いますよ。」と書いただけでは、笑顔で「ちがいますよー」と言ってるのか、ムッとして否定しているのか、ニュアンスが分からない、というようなものです。
ネットユーザー=熟達した文章表現者や読解者というわけではありませんから、書く段階と読む段階のそれぞれで誤解が起きるのは、ある程度しかたのないことだと考えてもいいかもしれせん。これに対しては、顔文字や絵文字、コミュニティ内独特の用語を使うなど、ニュアンスまで伝えるための工夫はさまざまに行われています。
また「コミュニケーションが文字中心」であることと関連しますが、対話相手の身体の感覚が圧倒的に希薄なのも、インターネットの弱点だといえるでしょう。文字だけよりは声が聞こえた方が、顔写真が見られた方が、さらには、会話と連動した表情の変化や声のトーンの変化が分かった方が、同じ場所で空気を共有したり、体に触れあったときの方が、相手の情報が多く、コミュニケーションがやりやすくて、満足度も高くなるものです。ネットでは今のところ、いくら環境を整えてもビデオチャットあたりが限界となっています。
いい経験ができるのは「人生の岐路」にいるとき
こうした特徴を持つインターネットで、「いい経験」をするにはどうしたらいいのでしょうか? なかなか漠然とした難しい問題ですが、私は「人生の岐路」に立っている人に、「いい経験」をしている人が多いと感じており、これが有力なヒントになると考えています。
例えば、進学や就職、引越しなどを検討しているとき、その後で周囲の環境ががらっと変わってしまったとき、出産や転職など新しいものに挑むとき、病気や失職など突然のトラブルに見舞われたときなどです。このような場面では、それまでの自分の知識や経験・周囲の人脈だけでは対処しきれないことも多いでしょう。
そんなとき、インターネットを利用して声を上げてみたら、同じような境遇の人と出会って励ましあうことができるかもしれません。または、似たような壁をすでに乗り越えた先輩からのアドバイスがもらえるかもしれません。
こうした人たちの多くには、共通した特徴があります。
- 自分には足りないことがある、という謙虚な認識
- 知識・情報を求める切実さ、高いモチベーション
- 仲間や助言者を求める、コミュニケーションに積極的な姿勢
- 変化に対するおそれの無さ。積極的に変化を求める姿勢
そして、こうしたことこそが、インターネットで「いい経験」をするために必要なものだ、と考えています。
次回からは、人生の岐路でインターネットを利用し、インターネットから力をもらった人たちのレポートをお届けします。
どうもマスメディアにおいては暗いニュースばかりが伝えられがちなインターネットが、実はすばらしい面を持っている、ということを多くの方にきちんと知ってほしい、そして、困ったときに「そうだ、インターネットを使ってみよう」と思い出してほしいと思います。
まとめ
- 現代において、インターネットで「いい経験」をすることは、暮らしを豊かにする上で意義のあること
- インターネットの強力なマッチング機能が「小さな親切」を届けやすくする
- そして同時に「小さな親切」の効果を最大化し、ポジティブスパイラルを起こしやすくできる
- いい経験をするチャンスは「人生の岐路」にいるとき。人生の岐路にいる人の特質が、インターネットでいい経験をするのに適している
- 2007.11.04
- [人生の岐路にインターネット]
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