「好きなブロガーがおすすめしている物は買いたくなる心理」を説明する「影響力の武器」

こんなに興奮した本は久し振り、というか初めてかもしれない。今のテンションにまかせて「Web2.0マーケティングの全ては『影響力の武器』で説明できる!」とか何とか言い出したい勢いですがそれは小出しにしていくとして......。それにしても買ってから1年近く積みっぱなしだった俺はバカかと。

影響力の武器[第二版]影響力の武器[第二版]
ロバート・B・チャルディーニ 社会行動研究会

誠信書房 2007-09-14
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9月に、お値段も少しオトクになって第二版が発売とのこと。

本書は社会の中で働く、人間の本能と言ってもよいような反射的な行動について解説したもの。「私たちは意外とモノを考えてないことがあり、コトの本質とは異なった情報や働きかけに反応し、行動させられてしまうことがある」という話をしている。

そして、行動"させられている"ことに気づいている人は少なく、私たちは「自分で考えて行動した」と思い込みながら、実は単に「(考えることを停止させられたまま)行動させられている」こともある、という話になりそうだ。ガクブル。

条件反射で「カチッ・サー」

この、「(考えさせずに反射的に)行動させる」ための諸々のテクニックが「影響力の武器」なわけだけども、この「影響力の武器」という概念の獲得は、いろんなモノの見方をガラッと変えうる気がしている。

つまり......、私はこれまで、自分が覚醒している間の行動は全て自分の思考に基づいてのものだと認識していたけども、実は、強い反射的反応によって、自分の「思考」が働かない状態で取らされた行動もあるようだ。そして、その行動に対して「脳が勝手に『あのときはこう考えたんだよな』と辻褄合せのための考えを後付けででっち上げた」という考え方もできそうだ。

また、充分に思考する余裕がある場面であっても、一定の反射的反応を「しなければ」という心理的圧力が働き、正常な思考ができなくなってしまうため、その反応パターンを逸脱した行動を取るのは難しいのだという。

こういう考え方を理解するには、「思考」という言葉を2つのレイヤーに分けて考えると、分かりやすいかもしれない。

人間にとって「思考」することはそれなりにエネルギーがかかるものであり、日常のすべてのことについてきちんと思考しようとすると、無駄が多くなってしまう。

そこで、ある程度パターン化できるものについては、その特徴的な事象を受けて反射的に反応(短絡的思考とかいう意味で使われるところの「脊髄反射」)することで、より困難な問題にでくわした時のために思考するためのエネルギーを節約しようとするわけだ。そうすることで人間は生きやすくなる。

また、"恩を受けてもお礼をしない"よりも"お礼をする"という反応パターンの方が好ましいものとして選択され、普及し、継承されていくことで、人類は繁栄してきた。本書ではこういう反射的な反応を「カチッ・サー」と呼んでいる。

悪用される「影響力の武器」

具体的な例を挙げよう。例えば「路上で数人の集団が空を見上げていると、周囲を通った通行人も(実際には何もないのに)その方向を見上げてしまう」という、よく語られる現象がある。

これは、下に挙げた中の「社会的証明」というやつの一種だ。何人かが揃って一定の方向を注視しているのを無視する人間よりも、そちらに注意を向ける人間の方が生き残れた(例えば天変地異に素早く反応できたとか)から、継承されてきた特性なのだと考えられる。

で、一方で、この特性を利用して悪さする奴が現れる。テレビのイタズラ番組ぐらいなら許せたとしても、こうした特性を利用して不当に高価な防災グッズを売りつけるとかいった詐欺行為もある。人類の繁栄のために私たちに備わっている「カチッ・サー」が、かえって私たちを害してしまっているじゃないか。どうしよう!?

たとえばこんな「影響力の武器」

本書に紹介されている代表的な「影響力の武器」を、ざっと挙げておく。事例は私が適当に考えたものだが。

  • 不良がたまに良いことをすると、いつも良いことをしている奴よりも褒められる(知覚のコントラスト)
  • 恩を受けると、相手に(好きか嫌いかにかかわらず)恩返しをしなければいけないと思ってしまう(返報性)
  • 何かをいったん宣言しちゃうと引っ込みがつかなくなる(一貫性)
  • 田舎者が東京に出てきて路上で寝ている酔っぱらいを見つけると一瞬驚くが、周囲の人たちがスルーしているのを見て「東京じゃこれが日常茶飯事なんだな。ほっとこう」と思ってしまう(社会的証明)
  • 好きな人に勧められると、それがとても良いものに思えて買いたくなる(好意)
  • 立派な身なりの人に命令されると、つい従ってしまう(権威)
  • 限定品に弱い(希少性)

といったのが、大まかな本書の内容。いずれも全く初めて聞くような話ではないけども、きちんとした解説を読んだのは初めてだった。

面白いのは、著者のチャルディーニ氏自身がこういうのに「だまされやすいタチ」であると告白しており、実際にだまされた事例が多数挙げられている点。これは難しい話の中にちょっとした息抜きタイムを提供してくれると同時に、本書の理論を補強している。また、全体として翻訳書によくある堅苦しさがない、柔らかな文体であるのもよい。読みやすくて。

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