「のだめ軍団」を新語化した元「現代用語の基礎知識」編集長・亀井肇氏の技術  

BOGARD La+からリンクされていて知ったのですが、Yahoo! JAPANの新語辞書に「のだめ軍団」が入ったそうです。 Yahoo!辞書 - のだめ軍団クラシックの演奏会で、これまでは来なかったようなグループが訪れ、従来の観客に違和感を抱かせる行動をとること。コンサートを主...

BOGARD La+からリンクされていて知ったのですが、Yahoo! JAPANの新語辞書に「のだめ軍団」が入ったそうです。

Yahoo!辞書 - のだめ軍団
クラシックの演奏会で、これまでは来なかったようなグループが訪れ、従来の観客に違和感を抱かせる行動をとること。コンサートを主催している団体などが名づけたとされる。「のだめ」は女性漫画誌『Kiss』(講談社)で2001年から連載されている、クラシック音楽をテーマとした二ノ宮知子作の漫画『のだめカンタービレ』から取られた。繊細な音色を楽しむクラシック音楽の演奏会には昔から守られてきた作法がある。しかし『のだめカンタービレ』に影響されて初めてクラシックの演奏会に訪れた観客には、それらのルールがわからないため、ささいな行き違いから口論などのトラブルが起こることがあるという。演奏中のパンフレットをめくる音や咳払い、大きな呼吸音などはトラブルの原因となりやすく、周囲への心配りが必要だ。

朝日新聞に載った根拠が謎の(誰が言ったのか、本当に誰かが言ってるのか、まるで分からない)記事が作った造語を小学館の子会社が拾い、今後はYahoo! JAPANドメイン上で広がっていくことになりそうだ。

こういう俗語の初出が明確でないのはよくあることだ。「萌え」なんかも明らかでないし。もし誰かが政治的な意図(例えば「のだめカンタービレ」のブームが気に入らないので、にわかクラシックファンの蔑称に使って貶めてやろうとか)を持って作ったものだとしても、それを追求するのは難しい。上記の解説文はなかなか上手な文章で、「~コンサートを主催している団体などが名づけたとされる」と、「らしいけど、ホントのとこは知らないよーん」とシラを切っている。

典型的「のだめ軍団」として朝日新聞の記事に2、3書いておくか

こちらでも指摘したが、クラシック演奏会でのトラブルというのは「にわかファンが不作法」という単純な問題ではない場合が多い。不作法な客を音にうるさい客が指摘することからトラブルになることが多いが、不作法な客には、マナーを分かっていない初心者客もいれば、場慣れしすぎた常連客もいる。指摘する客も、初心者から常連までさまざま。「のだめ」から興味を持ったファンか、古参ファンかという区別とは無関係がない。

また、クラシック愛好家のコミュニティでは「どのタイミングで手を叩くべきか」、「ブラボーと叫ぶのはいつがベストか」、「周りにうるさいヤツがいたときの対策は?」なんてのは昔からトートロジー的に議論され続けているものだそうだ。もちろんある程度のコンセンサスはベースとしてあるけども。

なので「繊細な音色を楽しむクラシック音楽の演奏会には昔から守られてきた作法がある」とか「『のだめカンタービレ』に影響されて初めてクラシックの演奏会に訪れた観客には、それらのルールがわからないため」というような記述は、迂闊な言い切りを避けつつ、紋切り型の言葉を並べてクラシックに疎い人間の印象を分かりやすいものへ固定化させながら、のだめファンの悪いイメージを植え付けるという、実に上手なテクニックが使われた文章であり、ホントかよ亀井肇さん、という印象を持たざるを得ない。


ジャパンナレッジという会社はかなり貪欲にネタを漁っていて、最近のだと「弱気ヒーロー」なんかは、もはや新語を収集するというより造っている。新語は自分で作て自分で辞書に載せちゃダメ、なんてルールはないだろうから、まあいいんだろうが。