電通 vs. Googleの構図とプロブロガーの可能性  

日経ビジネス2007年5月14日号の特集について、今さらだけど軽く。

電通 vs. Googleという対立は不可解か?

広告代理店と検索エンジンがライバルというのは変か? そうでもない。「広告」という言葉を軸に考えると見えにくい話になるが、

  • 電通=マスメディアを後ろから支配し、大衆に影響を及ぼしてきた企業
  • Google=検索エンジンにより、大衆の行動に影響を及ぼす力を持った企業

と捉えればOK。そもそも、Googleの方がずっと大きな額を「広告」で稼いでることになってるわけで、電通としては面白くないだろうし、広告屋のメンツにかけても、そこのパイを分捕りたいだろう。ここでライバル宣言しておくことはパフォーマンスとしてもアリなんでしょう。

ヘッドからの電通、テールからのGoogle

ロングテール論をもとに大雑把にまとめてしまうと、電通はヘッドをクライアントとして営業しており、Googleはテールをクライアントとして取り込むことによって成長してきた。この段階では棲み分けられていたことになる。

ところが、昨今Googleはネット以外のメディア広告にも進出する動きを見せており、一方で電通はAdWords、AdSence対抗のサービスができる技術を手に入れた。日経ビジネスによると、5月末には「キーワード連動型のネット広告配信事業に本格参入する」とのことで、まだ詳細は見えないが、これがAdSence対抗にもなるサービスだったら、かなり面白い。

真逆の企業イメージ

多くのネットユーザーにとって、電通といえば「悪」であり「敵」、対してGoogleは「善」であり「味方」だというイメージがあるだろう。電通の施策に対して何か拒否反応が出たりしないか? とも思うんだが、電通がネット広告に打って出る場合、サービス主体はcciなりNTTグループなりになりそうなので、背後の電通臭が消えてればどーでもいいかもしれない。

一方でGoogleに対しては、サポートの不備や、一方的なAdSenceの契約破棄に対する批判の声もある。電通がこのあたりをもうちょっとマシに解決できるソリューションを提供すれば、アフィリエイトに熱心な層は一気に電通シンパに行きそうに思える。

AdSenceの報酬下がってない?

ここ数か月、私のブログでは、同じぐらいのpv・クリック率ながらAdSenceの報酬額が下がっている。以前から注意してウォッチしていたわけではないのでよく分からないのだけど、AdWords、AdSenceで出る広告の質が下がっているような、Yahoo! JAPANのスポンサードサーチと比べても、広告の数、企業のグレードが低い感じがする。

こうした現象の裏に電通が絡んでいるのだったら面白い。大企業における「広告費とは代理店に渡して何かやってもらうための金」という認識が揺るがないなら、ヘッドを押さえる電通の優位は動かず、そこの金が高利益をもたらすCGM広告としてブロガーに流れていくような仕組みが出来たら、いわゆる狭義での「ブログで食う」は、日本でもかなり現実的なものと成りうる。

このあたり、電通の影響力によって(かよらずにかは見えないだろうが)スターブロガーの力がもっと上げ底されていく、という可能性にも繋がる。例えば、ネタフルさんがテレビに出る、みたいな未来も含め。[佐々木俊尚さん解説して

電通の企業イメージが黒いのとか関係なさげ

メッセージを発信するのは企業。電通はクリエイティブ。いくら「電通」本体のイメージが黒くても関係ないんだろうな。特集1見開き目の事例に出ていた検索CM→ブログパーツというのは、マス媒体からCGMに仕掛けるマーケティング手法としてベストと思う。技術的なハードルをより下げる方法もあるが、そこは誤差として。

多数のブログパーツを用意して「多様性」というほどではないかもしれないがユーザーが主体的に「私がこれを選んだ」という感覚を与え、「ブログパーツを貼る(サイドバーに貼るというよりは、エントリーに貼る感じ。以下のやつ)」という行為から、一定の関心や共感を主張させる。ここで、素人に無理やり文章を書かせようとかしないあたり、分かってる。

それにしても真逆の思考

「広告」や「大衆への影響力」という土俵の上では、電通とGoogleはライバルといえる。だが、その土俵に対する両社のアプローチはまったく逆だ。

電通はマス媒体を得意とし、優れたクリエイティブによってユーザーの関心(アテンション)を奪い取り、欲求を植えつけることによって広告主から金を取る。いわば「プッシュ」の、「与える」企業だと捉えられる。

対してGoogleはネットにあり、既に一定の欲求を持って能動的に行動するユーザーに対して、山ほどある情報の中から一定のロジックによって適切なものを選び出し、推薦する。その段階で広告も表示し、金を取る。電通に対して「プル」の、「間引く」企業と考えられる(広告は結局のところ「与える」ものであるが、クリックされない広告は表示位置が下がるなどの間引きを行っている)。

能動的に行動できるユーザーにはGoogle型アプローチが有効だろうし、逆に、受動的にしか動かないユーザーには電通型アプローチが有効だろう。電通とGoogleのどっちが勝つか、というのは、ある面では国民の民度が試されている、と言えるかもしれない。

とはいえ、人は全方位において高リテラシーを保てるもんでもない。趣味と仕事関係と生活の大事な部分について一定の情報収集力と判断力を持ち能動的に行動できれば、メシをどこで食う、とか休日どこで遊ぶ、みたいなのは適当に踊らされててもいいじゃん、とそのあたりは割り切っておく。

ひとつのパラダイムシフトの可能性

上記に関連し「ネットで能動的に動くユーザー=良質顧客となる率が高いユーザー」という認識が浸透すれば、Google(同業他社含め)やCGMの力は今よりもっと強まるだろうし、ある種の業界において、大きな価値観の転換(45度ぐらいの)が起こるように思える。「ブログでCGMでバズマーケティング」みたいな言葉はある程度浸透しているが、数値やデータでない、そうした動きの主体となっているユーザーの姿が見えている、またはユーザーの姿を見ることに価値を感じている人は少ない。

こういう捉え方は、大企業にはまだまだ浸透していないのだろうか。私に見えている範囲では、そういう認識はほとんどされてないように感じる、そうして認識を改める機会を得るほどの危機感が来ていない、ということかなと思う。このあたりも[誰か解説して]。

そしてまた、電通がアルファブロガー的な存在をどのように認識しているのかも謎だ。印象としては、あんまりウェブ的オープン指向な世界に深入りすることは避けたいんじゃないかなと思う。自分たち業界とは切り離された世界で、操縦はしたいけど対話はしたくない、みたいな意識があるんじゃないかと。

参考:

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