ブログによるクチコミマーケティングに関する、ちょっとしたまとめ

もしくは「クチコミの技術」を貰ったよ記念記事。

「マス広告が効かなくなった」と言われる理由

マス広告が効かなくなった、これからはクチコミ重要だよね、言われる背景として、注目しておきたいポイントが2つがあります。ひとつは「ネットの台頭」。ネットが広く世帯に普及し、ひと昔前ならテレビに全注意の50%を割いていたのが、テレビ30%ネット20%ぐらいになった、という人がいっぱいいる。テレビは昔と同様に点いているけど、CMタイムにはどっかの実況スレやメッセに張り付いてて見てない、とかいうこともある。

もうひとつは、ネットの普及も含まれるんだけど「情報過多」。テレビやら雑誌やら新聞やらネットやら街頭のポスターやらテレビ内のモニターやら、あらゆるメディアがユーザーの注意を惹こうと刺激的な映像を流し続ける。すると、刺激的な情報に晒され続けて脳がおかしくなるのか一種の防衛反応か、刺激を受けてもあまり反応が起きなくなる。じゃあ、ともっと刺激的な広告が作られる、でもそれにも反応が……といういたちごっこの結果、マス広告効かないねーという認識は多くの人が共有するものとなる。

「ストーリー」をつけることで商品を売る

もうちょっとマスメディア話。情報過多な中から抜け出すために取られる方法は、いくつか考えられます。料理でいえば、醤油・塩・味噌なんて味はもう陳腐だ。でもニンニクバターだトンコツ醤油だといった小手先のバリエーションにも限界がある。じゃあ、どうすれば? となったときに思い浮かぶのが「物語」という付加価値の付与。

例えば「こだわり素材」といった物語。料理の前に朴訥な農家のおじさんとか、爽やかな風がそよぐ北海道の大地とかを紹介してみる。一口食べたときに、そういった世界が頭の中に広がり「やっぱりこだわり素材はうまいねー」という話になれば付加価値作戦は大成功。苦労に苦労を重ねてこの味を生み出した料理人のプロジェクトX的物語を見せるのもアリだし、人気タレントがお勧めしています、として「○○さんと同じものを食べた」という満足感を付けて売るという手もある。

ちょっと違うものとして、チュートリアルとしての「ストーリー」を提示するというのもある。分かりにくい商品の利用シーンを分かりやすく提示する、珍妙な調理器具で見事に野菜をさばく実演販売みたいなアプローチ。あの爽快な場面の主人公になりたくて、ついつい買ってしまう……んじゃないかな。


で、ブログによるセールスプロモーション

「マス広告が効かない(ネットの台頭)」+「ストーリーで売る」の結果として、ネット上の登場人物(ネットで活躍している人)の「物語」に乗っけて広告やろうぜ、といった発想が生まれる(または発見される)。そして、その手段のひとつが、いわゆる「ブログマーケティング」と呼ばれるもの。ブロガーという、広告業界的に見ればシロウトである存在が書くブログ記事の中で商品を紹介し、そのブロガーについたファン、ブロガーの価値観を信頼する読者に広告を売っていこう、という考えです。

クチコミ図1.gif


「ウェブ進化論」中の「総表現社会」に近い話になるが、ネットでブログによるセールスプロモーションをやろうとするときには、下図のような階層分布をイメージしておくといい。いちばん下にブログの受信者・購買者となる一般人を置き、情報の基点として企業を位置付け、間にブロガーがあると考える。

企業が直接ブログの発信者になることも考えられるが、ネットの双方向性の高さ、コミュニケーションをある程度実現しないといけない(ブログはコミュニケーション性の高さがひとつのウリであり、それを期待するユーザーを無視すると不満が高まりやすい)こと等を考えると、ある程度大きな(数百人を超える規模の)マーケットでは実質的に無理。担当者が過労で倒れるか、(投資、または期待のわりに)満足のいく成果を挙げられずに終わる可能性が高い。

クチコミ図2

ブロガーに情報をカスケードしてもらう

そこで、ブログプロモーションの現実的な形として、企業は特定少数の影響力の強いブロガー(アルファブロガー)にのみ直接コンタクトを取り、彼らから中堅・小規模ブロガーへと情報をカスケードしてもらう、という形が考えられる。

このメリットとしては、前述のようなコミュニケーションの実現のほかに、カスケードしていく中で各ブロガーが「自分の言葉」を生んでくれるので、キャズム論で言うところの「橋頭堡」を大量に確保できる(可能性がある)、ということも挙げられる。


ブロガーが築いてくれる、大量の橋頭堡

例えば、えー……。「小さくて軽いムービーデジカメ」が発売になったとする。「小さくて軽いムービーデジカメ」という属性だけではデジカメやガジェットのマニアにしか響かないかもしれないが、これを育児中のブロガーが発見し「小さくて軽くて画質も十分。ビデオカメラは重くて面倒で持ち歩く気になれなかったけれど、これは毎日持ち歩いてます」などと新しいストーリーをつけてくれることで、「育児中の親」というマーケットに突っ込んでいくことができる。

同様に愛犬家グループで、ゴルフ愛好家の間で、ツーリングサークルで、釣り仲間の掲示板で……と、プロダクトがマジョリティのマーケットに入っていく足がかり(橋頭堡)を、ブロガーがいつのまにか築いてくれる、というのは企業にとって大きな魅力だといえるだろう。

クチコミ図3

企業の言葉をブロガーの言葉に翻訳する存在としてのアルファブロガー

こうした、クチコミのカスケードによって大量の橋頭堡を確保する、という戦略を考えるとき、最重要ポイントとなるのは、企業の言い分もブロガーの心理も分かる影響力の強いブロガー(わかりやすいので『アルファブロガー』という言葉を以降も使う)の確保、である。

企業は「アルファブロガーに『ネタにできるプロダクトだ』と認識してもらい、記事にしてもらう」という、これも一種の橋頭堡を築かないといけない。

そう考えるとき、アルファブロガーの代表的な2氏による「クチコミの技術」を読んでおくことは、敵を知る上で非常に重要なことだと言える。また、アルファブロガーからカスケードされる立場の中堅以下ブロガーにとっても、有用な情報がたくさん手に入るだろう。

こんなところが、いわゆる「ブログによるクチコミマーケティング」の現状と、その中での「クチコミの技術」を読んどく意義かなと。

クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング
コグレ マサト いしたに まさき
日経BP社 (2007/03/29)
売り上げランキング: 124


いわゆる「ブログ界」以外で、こういう構造はできるのか?

個人的に興味があるのは、このあたりを本当に「技術(一定の手順を踏めば誰でもできるハウ・ツー)」としてシステム化できるのか? という点と、いわゆる「ブログ界(ここではIT・マーケティング業界関係者の世界と考える)」以外でも、こういう構造が作れるのか? という点。まあアフィリエイトやドロップシッピングみたいなシステムとしては既に成立しているんだろうけど、例えばお料理ブロガーとその読者のコミュニティの中で、カリスマお料理ブロガーを集めてなんかやる、みたいな動きは今後できていくのかなあと。

広い意味では何かしらできていくんだろうけど、今のブログよりももうちょっとシステマティックで、融通は効かないかわりに一定の手順を踏めば誰でも簡単に利用でき、あんまり炎上がどうとか面倒なことを考えないでいい構造が結局のところ普及していく気がする。現在あるものだと、@cosmeとかCOOKPADとかサンプル百貨店の発展形のようなものとか、価格.comAPIのようなものとか。

  • はてなブックマーク - ブログによるクチコミマーケティングに関する、ちょっとしたまとめ   このエントリーを含むはてなブックマーク