「女の童貞マインド」を描いてくれたら楽しいな「ボーイズ・オン・ザ・ラン」花沢健吾  

ルサンチマン」で鮮烈すぎるデビューを飾った花沢健吾の新作。

ボーイズ・オン・ザ・ラン 1 (1)
花沢 健吾
小学館 (2005/11/30)

「ルサンチマン」において、童貞の楽園を守るために命を張った越後、人工知能の月子に操を立てた拓郎を通じて、花沢健吾は童貞なりのカッコ良さを(正確にはカッコ良さ「も」)描いたのだと思う。

その「童貞マインドのカッコ良さ」は、ネット+仮想世界のキャラとの恋愛というギミックと合わさって、一部の熱狂的な支持を受けた。本作についてウラBUBUKAのインタビューによると、「『女なんか、ざまーみろ!』という僕自身のルサンチマンを出したかった」のだという。

その支持を基盤として新作も同じ層へ売るぜ、と考えれば、また仮想世界との恋愛、リアル女なんかざまーみろ! 的な設定で行くのが良いはずだ。でも、そうは来なかった(「ルサンチマン」のセールスがイマイチだったので、という理由もあるのかもしれないが)。「ボーイズ・オン・ザ・ラン」では携帯メールは出てくるけどネットは出てこないし、今後も出てきそうな感じはない。主人公の田西敏行27歳は、最初から植村ちはるという23歳のリアル女性に好意を持っている。

まだストーリーは転がりだしたばかりで、どんな話になっていくのか分からない。だからこれは単なる予想というか希望なんだけど「女なんかざまーみろ!」の次は「女なんかたいしたことない!」という話になったら面白いなと思う。

この作品では、女の中にもある童貞マインド(明らかに変な表現だが。異性の理解できない部分への畏れとか、異性への自分の見せ方がよく分かってなかったりとか、恋愛やセックスへの潔癖さとか、そういう童貞心に通じるもの)を描いてくれたら面白い。今のところ、ちはるにはその素質が十分にあるようだし。ちなみに田西は素人童貞らしい。

誰か異性とのコミュニケーションを親密にしていきたいと思うなら、おそらく押したり引いたりしながら向と対策を掴んでいくしかない。でも、童貞マインドのひとつである「異性への畏れ」は、コミュニケーションにおいて「押す」ということにブレーキをかけてしまう。本作の最初の田西とちはるも、そういう状態にある。

で、酒の力を借りたり恋愛上手な青山のアドバイスを受けたりしつつ、田西は「押す」ことを試みる。そこに携帯メールというアイテムがうまくはまっている気がする。イケメン(青山)が言えばキマるモテワードも、顔や話し方がアレなキモメン(田西)が使うとむしろキモがられる、という問題を「青山のアドバイス通りの文面で携帯メールを送る」という方法によって緩和している。

田西はたいしたことない奴だけど、実はちはるもそんなにたいしたことなくて、だからそんなにビビらんでいいよ、その奥にあるものに臆さず手を出せ、みたいな話になっていったら、「ざまーみろ(下に見てみる)」から「たいしたことない(同じ高さに見てみる)」ということで、「ルサンチマン」の次の作品としては最高なんじゃなかろうか。

関連:
「ルサンチマン」 花沢健吾
「ルサンチマン 3」 花沢健吾
「ルサンチマン 4」 花沢健吾

追記:
似たようなことを書いてる方がいた。連載開始直後に。
花沢健吾 新連載 『ボーイズ・オン・ザ・ラン』  [マンガマニヤック]  (ヘボログ)

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