はてなブックマークで盛り上がる問題の湯加減と、割れ窓理論  

はてなブックマークを見ていると、やたらと「非モテ」問題と「無断リンク」問題が盛り上がっている。この両方の話題に共通点はないが、現象には共通点がありそうだ。以下、まだ未整理な部分もあるが考えたこと。 ●問題の性質の類似点 両方とも、問題を浅く眺めただけの第三者でも、簡単に答え(らし...

はてなブックマークを見ていると、やたらと「非モテ」問題と「無断リンク」問題が盛り上がっている。この両方の話題に共通点はないが、現象には共通点がありそうだ。以下、まだ未整理な部分もあるが考えたこと。

●問題の性質の類似点
両方とも、問題を浅く眺めただけの第三者でも、簡単に答え(らしきもの)が浮かぶ問題である。

・「非モテ」  なになに? もてない奴がいるのか。まず自分を変えろ
・「無断リンク」 無断リンク禁止? そんなのナンセンスだ

こういう、簡単に答えたくなる問題を「いい湯加減の問題」と呼んでおく。


●いい湯加減の問題を、はてなブックマークがかき混ぜる
いい湯加減の問題は、それまでの流れを把握していない新参者が参加しやすく、それゆえに議論が混乱しやすい。

また、そのような、議論の流れを無視したエントリーがブックマークされて同じタグで分類されてしまうことによって、ますます議論の混乱を加速する傾向が見られる。議論を順調に進めていた人が、後から参戦した人の言論に反応して、議論を混乱させてしまうこともある。

さらに、似たようなエントリーを何度も書いて意図的に議論をループさせることで被ブックマーク数、アクセス数が稼げるということも、議論の混乱を助長しているのかもしれない。

前にこんなことを書いたが、
ブログは論者を無駄な言い合いから救う(その1)(※その2は書いていない)

読者としても、両方を読み比べやすいし、トラックバックというシステムの非常にいいところで、1の意見に対して10の反論があったら、1の方が目立つようになっています。

ここで書いたのは、議論の核となるブログや議論を進めるための前提となる事柄が書かれたブログは、リンク&トラックバックによって自然にハブ化する、ということ。はてなブックマークで議論を眺めている場合、どこがハブなのか分かりにくい。だから、はてなブックマーク経由で議論に参戦した人は、前提など共有することなく話し始める可能性が高い。


●「割れ窓理論」によるコメントの暴言化
はてなブックマークのコメントは50文字しか書けない。そして、このコメントは自分の整理用に使えるのと同時に、他の読者やブックマークしたエントリーの書き手が目にする可能性もある。50文字なんて自分の整理用だけでも時として不足する文字数だし、ましてや他社に自分の意見を正確に伝えることなど、よほどシンプルなメッセージでなければ無理だと考えるべきだ。

逆にいえば、シンプルなメッセージならきちんと伝えられる。例えば罵声や、断片的な感想だ。「しねばいいのに」なんてのはもはや罵声というよりも呪詛の類だ。個人的には、断片的な感想として「つまんなかった」とか書かれるのがいちばん嫌だと思う。

はてなブックマークのコメントには、「自分の整理用ですから」という方便のもとに、テレビの前の独り言レベルのことが安易に書けてしまう心理的ハードルの低さがある。テレビで「真剣10代しゃべり場」を見て「こいつバカじゃねーの」と罵声を投げかけていても、本人に面と向かって同じことを言う人はいないだろう(中にはいるだろうが)。

でも、はてなブックマークのコメントには、これとほぼ同レベルの無神経な罵声を書けてしまう。バカとは書かないまでも、論拠も示さないまま「非常に愚かな発言」てな感じで。自分の行動は単に「ブックマークしてコメントをつけている」だけなので、相手に直接アクセスしている感覚がないか、極めて希薄だからだろう。

また、暴言化するコメントを大量に読んでいれば、「あんなことを言ってる奴がいるから、これくらいのもOKだろう」という心理から、自分のコメントも刺々しいものになりがちだ。小さな暴言が大きな暴言の下地になる、というのは「割れ窓理論」に通じるだろう。


●運営者の無関心
想像するに、はてなブックマークのようなシステムは、いわゆるギークにとってはうまく回る理想的なシステムなのだと思う。高度な技術の問題は「いい湯加減」ではなく「アツい」ため、分かっている人しか参加できない(参入障壁が高い)。なので、それほどの混乱は起こらない。

一方、いい湯加減の諸問題に対して、はてなスタッフは我関せずの態度のようだ。それは当然で、ベンチャー起こしてバリバリ働いている人間に、そんな問題に関心を持っている時間などないに違いない。id:jkondoid:naoyaのブックマークに「非モテ」や「無断リンク」タグなんて1個もない。

しかし、はてなはツールだけを作っている会社ではなく、コミュニティを運営している会社である。Movable Typeを使ったサイトが問題を起こしてもSixApartが責任を取る必要はないだろうが、TypePad上で問題が起きたら、管理責任を問われる。管理云々については既に複数の場所で指摘されているので省略。


●ここまでのまとめ
・はてなブックマークは、高い情報収集能力、注目度、フィルタリング機能と、簡単すぎるコメント機能によって、いい湯加減の問題に関する議論を複雑化・混乱させる作用があると考えられる
・はてなブックマークのコメント欄は「割れ窓理論」に当てはまる形で暴言化がエスカレートしている→1ユーザーの変化を観察したもの
・暴言化している部分について、運営者は無関心(少なくとも関心を表明していない)


●はてなブックマークだけの問題ではない
こういう問題は、はてなブックマークの問題だけではない。先日公開された「ECナビ人気ニュース」ははてなブックマークにそっくりすぎて驚いたが、ここがそのうちいい具合に荒れ始める可能性も否定できない。また、今後新しい「押しかけコメントツール」が登場する可能性もある。

そこでも、批判の名のもとに一方的な罵倒や中傷、吊るし上げが行われる可能性があり、そういう意味において、Webのオープンな場所で意見を表明していながら理不尽な批判はやめて下さいなんて言うのは、無断リンク禁止と言うのにほぼ等しい無意味さだ、とは思う。

これはいささか突き詰めすぎた悲観論だが、今後、堂々とブログを書けるのは、失う物のないケンカ上等の暇人と、仕事で書いている人間のどっちかだけになるのではないか、という気がしている。あと、強い意志を持った主張者(準仕事)や、芸人キャラが定着した人(準暇人)、超人的なネットリテラシーを身に着けた人(注:このあたり既にはてなブックマークで引用されていたけど、散歩から帰ってきて読み返したら変だったので直しました)。

恋愛初心者をおもしろおかしく書いたら非モテから吊るし上げられ、焼肉パーティの話を書いたらベジタリアンから吊るし上げられ、病気のおじいちゃんを老人ホームに入れた話を書いたら老人団体から吊るし上げられ、パソコン初心者の失敗をおもしろおかしく書いたらパソコン初心者集団から吊るし上げられ、なんてことが続いていくと、余暇でネットをやる程度の人はみんなクローズドな世界に行ってしまうだろう。それはそれで、ひとつの正解なのかもしれないが。

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はてブコメントの暴力性(ARTIFACT@ハテナ系) ここはコメント欄も含めて。
コメント欄の長さがそのまま、意見をきっちり伝えるためにどれだけ言葉を尽くす必要があるのか、を表している。コメントの羅列が「数の暴力」になるという認識がなかったのには驚いたが、そこに共通理解がなかった、ということが認識されたことで、議論は次のステップに進めるように思う。コメント欄で丁寧に会話し思考を進めたLeirmann氏に敬意を持った。

●「批判」という言葉を分解してみる
どうも批判という言葉を便利に使いすぎている人が多い気がするのだけど、どういう意図を持って「批判」するかで、その意味合いは180度変わる。発言の価値をはかり、評価し、そして理解し合おうという意図からの発言なのか、それとも欠点をあげつらい、攻撃し、敗北感を与えたいのか、はたまた、対話する気はないが自己満足したいだけなのか。

1ユーザーとして同じ立場のユーザーが書いたエントリーに対しコメントするのであれば、常に理解し合おうという意図からのものでありたいと考える。理解し合うために50文字で足りるのかといえば、とても足りない。

はてなブックマークを使いつつコメントを書くやり方の良い例として、はてなのパパとも言われる加野瀬さんの使い方を(ご存知の方も多いと思うが)紹介したい。彼はエントリーのコメント欄にコメントを書いたら「コメント」というタグをつけてブックマークしている。相手のコメント欄になら長文のコメントを書ける。非常に良い方法だと思うのだが、いかがだろうか。