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「デジモノに埋もれる日々」さんの記事を読んで:口コミに関する考察  

私はそれほど物欲の強い方ではないので、買い物に関してはデジモノに埋もれる日々さんのような、物欲の強い(らしい)人の言うことの方がリアルなのではないかと思う。

という印象を持ちつつ、トラックバックいただいたこの記事を拝読した。

広告とクチコミが織り成す「ポジティブ/ネガティブ」の綱引き合戦(デジモノに埋もれる日々)

ここで書かれていることを要約すると、「商品を薦めるポジティブ情報な情報であるところのマス広告に対して、口コミはネガティブな情報である。消費者はマス広告によって購買意欲を喚起されるが、口コミによって押しとどめられる。だから『口コミの影響で買った』という買い物は少ない」ということだと理解した。

●マス広告=広く浅いメッセージ/口コミ=狭く深いメッセージ
私の理解している口コミのシステムはちょっと違う。基本的にはそこいらのクチコミマーケティングの本に書かれている通りだが、個人的な経験に照らしても、以下のような感じだと思う。

まず、マス広告が確かに商品を薦めるポジティブ情報であるけれども、それがユーザーに響かなくなっているのが現状。つまり、いくら情報を流していても消費者の購買意欲は喚起されず、スルーされてしまっている。これはマス広告や商品そのものが増えすぎていたり、消費者の感覚が麻痺&メッセージが陳腐化してしまっていることが原因として挙げられる。

その一方で、口コミ情報というのは一般消費者のリアルな体験に基づくメッセージであり、マスな枠では響かないが、一部の人には強烈に響く。

例えば、キヤノンのデジカメEOS 20Dには「表現者のデジタル一眼レフ、EOS 20D誕生」というコピーがついている。でも、これを読んで「そうかー表現者の一眼レフなのかー」と思って買う人はいない。マス広告のメッセージは具体性に欠け、消費者の心の深くまでは届かない。他の多くの広告のメッセージの中に埋もれてしまう。

でも、例えば「EOS 20Dで撮ったら、赤ちゃんの写真がすごくキレイになりました! 肌の質感が違います。どんな場面でもきれいに撮れるし、一眼レフにしてよかった!」という体験談を読んだら、赤ちゃんのいる現在コンパクトデジカメしか持っていない人は、ものすごくEOS 20Dに興味を持つようになるだろう。具体的なエピソードであるため、その効果を具体的なものとして描きやすい。また、企業の広告としてでなく、これといって利害関係にあるわけではない一般人が発しているメッセージであるので、営業トークとは違うリアルな体験談として説得力がある。

マス広告と口コミの関係というのは、第一に、このように「マス=広く浅いメッセージ/口コミ=狭く深いエピソード」という対比であると理解している。


●ネガティブ口コミに対する2つの対処
口コミには、ポジティブなばかりの「企業からの情報」に対する反証、ネガティブな情報である、という一面が確かにある。

これに対しては対処法が2つあると考える。ひとつは根本的に「商品を良いものにする」という対処。たいしたことのない商品を、マス広告でいいイメージを先行させて無理やり売る、という商売は、口コミによって潰される。ユーザーが手にとって、使って、実際にいいと思える物を作らないと、口コミの時代には生き残れない、という考えによる。

もうひとつは、そして差し引きプラスならOKと考えること。日産TIIDA BLOGに関するインタビューでカレンの四家さんがおっしゃっていたことなのだけど、

「時にはネガティブなトラックバックもありますが、それも、企業が直接公表することは難しい製品に関する情報のひとつであり、コンテキストを補強してくれるものだと捉えています」

という話がある。世の中に完璧なものなどなく、欠点は当然ある。それをメーカーとして最初から発表するのは難しいけれど、口コミとして流通することは当然ある。消費者の皆さんが、欠点も承知した上で買ってくれるなら、それはそれで満足度がより高くなるからいいんじゃないか、という考え方だ。


●口コミリサーチ、口コミ広報

「人の口に戸は立てられない」 という言葉の通り、クチコミを制御しようという試みは非常に難しいチャレンジであり、多くの場合は失敗に終わるでしょう。

それよりも、クチコミを 自らの映し鏡と考え、クチコミの情報に敏感に反応して、クチコミ検証への耐性を増すために商品の何処を改善していけば良いか、という生産活動へのフィードバックとしてクチコミを活用するのが、企業としては最も健全な手段となるハズです。

口コミ・マーケティングというと非常に広い範囲を指すが、その中身としては、口コミを利用したマーケティングリサーチと、販促・広報のふたつに大きく分けられると思う。デジモノに埋もれる日々さんがここで提案されているのは、リサーチの方。

リサーチメディアとしての口コミ活用については、「ファンサイト・マーケティング」という本でいろいろと書かれているので、関心のある方にはおすすめする。

TIIDA BLOGのようなものは、販促・広報の方を目的としている。これは、まず商品が良いものであり、そして口コミで語っていきやすいキーワードやエピソードがあり、といった条件が揃っていて、うまい語り手がいないと、なかなか成功しないと思う。逆にいえば、こういった条件を揃えて、ノウハウも蓄積しながらやっていけば、低予算で実りの大きい販促手段として確立しうると思う。


●デジタル機器の特殊な事情があるかもしれない
デジモノに埋もれる日々のCKさんが特に買われているようなデジタル機器の場合は、ちょっと特殊な事情があるんじゃないかと思えてきた。

デジタル機器の多くは、商品の差別化要因がスペックだけであることが多く、既にあるデジタル機器のカテゴリ(例えばデジカメ)に対して基礎的な知識がある人が商品を選ぶ場合、まずカタログを見比べて、要求スペックを満たしたものだけを選び出し、そこから絞り込む、という流れになることが多いはずだ(「おしゃれ」で差別化できているiPodのようなものは特殊な例)。一方で、スペック表に載らないところの細かい機能や、微妙な操作感が気になることもある。

ポジティブな情報はカタログがあれば十分。後は、カタログに載らないアラがないかを調査してふるいにかけたい、といったことであれば、CKさんが書かれたまんまのことになる。

きっと、こういうカテゴリの商品には定性的なエピソードである口コミよ情報りも、価格比較サイトのような簡単に多くの商品のスペックや価格を比較できる道具が有用なのだろう。

そうでないカテゴリの代表としては、例えば化粧品なんかが挙げられると思う。男である私ににとって化粧品は良く分からないけど、他にはお菓子なんかもそうだろう。イチゴのケーキとチョコケーキの差異がよく分からなくても、「やっぱり誕生日にはイチゴのケーキの方が気分が出るわ」とかいう口コミを読んだ後のバースデーパーティには、イチゴのケーキを買う。特に、その口コミの発信者とバースデーケーキを贈る相手の属性(性別、年齢など)が近ければ近いほど、それを受け入れる。

※こういうカテゴリ=商品のウリを明文化、数値化でき、ほぼ誰が使っても同じ印象になるもの/そうでないカテゴリ=商品のウリを明文化しにくく、ぼんやりとしたイメージで売ることが多くなるもの。使う人によって印象が変わるもの という違いかな、と仮に分類

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  • 2005.05.30